医学界新聞

 

本格的なシミュレーション教育をめざして

慶応大学医学部が「クリニカルシミュレーションラボ」開設


本格的な医学シミュレーション教育施設

 昨年12月6日,慶應義塾大学において「クリニカルシミュレーションラボ」の開所式が行なわれ,マスコミや大学研究者,医師など,多くの人が訪れた。
 同ラボは昨年9月から試験的に運営されてきたもので,多くのシミュレーション教材を用いた,臨床に近い形での学習が可能となっている。医学部長の北島政樹氏は,今年からの臨床研修必修化に触れ,「これからは,医学部入学から卒後2年間の研修を含めた8年間を通じて,臨床を念頭に置いた医学教育を一貫して行なっていく必要がある」とし,シミュレーションラボが,そのための場として活用されることへの期待を述べた。
 シミュレーション教材や,それらを常時配置した教室のある医学部はこれまで存在しなかったわけではない。しかし,今回のクリニカルシミュレーションラボでは,専任の管理職(安井清孝氏・看護師)が常駐すること,医学部教育のカリキュラムに,このラボを用いた授業がカリキュラム化されることが大きな特徴。本格的な医学シミュレーション教育の基盤が整ってきた感がある。また,学生,研修医に加え,看護師やコメディカルへの教育にも積極的に活用されていく予定であり,職種間の交流や相互の教育効果が期待されている。
 開所式の後半では,訪れた参加者が実際にラボ内のシミュレーション教材を体験した。腰椎穿刺や眼底検査,静脈注射など,さまざまな臨床手技が体験できるコーナーでは,多くの医師がシミュレーションでの手技を体験。体験者からは「皮膚の感触がリアル」といった反応が多く聞かれ,シミュレーション教材の活用法について質問があいついだ。
 一番大きな人型の教材では,脈拍や呼吸,呼吸音などが,見た目だけではなく実際に触覚・聴覚などで確かめられる。体験者は人間相手と同様,最新の注意を払いながら,人型シミュレーターの反応をたしかめていた。

KAPPAの取り組みとシミュレーションラボ

 クリニカルシミュレーションラボの利用は,研修医や医学部の教育のみにとどまらない。KAPPA(Keio ACLS Popularizing and Promoting Association)は慶応大学医学部の現6年生有志によってつくられたACLS普及のためのサークルだが,クリニカルシミュレーションラボができて以来,この場所で定期的にACLSセミナーなどを行なっている。
 開所式では田村雄一さん(慶大医学部6年,KAPPA代表)の司会のもと,シミュレーション教材を用いたACLSセミナーの教育効果が,ユーモアを交えた実演によって紹介された。
 KAPPAは現在21名で運営されているが,代表の田村さんは,「ACLSのみならず,学生発の医学教育向上の試みとして,次の世代へと引き継いでいくことを目標としたい」と述べ,学生・教員からの支援を呼びかけた。

●問い合わせ
慶應義塾大学医学部医学教育統括センター
クリニカル・シミュレーション・ラボ(センター長 小口芳久,常駐管理者 安井清孝)
 〒160-8582 東京都新宿区信濃町35
 TEL:03-3353-1211(代)内線62827
 E-mail:csl_keio@yahoo.co.jp
 URL:http://www.med.keio.ac.jp/csl-web

●施設の概要と常設機材
常施設概要
・総面積:126m2
・ベッド:5台
・TVモニター:2台
・ビデオ・DVD
・プロジェクター
・PC
・ビデオカメラ:2台

常設機材
・心臓病シミュレーター「イチロー」
・総合シミュレーター「シムマン」
・ACLSトレーナー「ハートシム4000」
・一次救命処置トレーナー「レサシアン」
・気道管理トレーナー
・モニター除細動器
・静脈注射・採血トレーナー
・眼底診察トレーナー
・腰椎穿刺トレーナー
・縫合トレーナー
・腹腔鏡トレーナー
・導尿・浣腸トレーナー
・12誘導心電図
・神経診療セット
・顕微鏡
・遠隔聴診システム