医学生・研修医のための
BOOKREVIEW
救急研修で研修医をサポートするよき「指導医」
問題解決型救急初期診療田中和豊 著
《書 評》黒川 清(日本学術会議会長)
新臨床研修制度で注目を集める救急医療

新しい卒後研修では,初期診療という意味でのプライマリ・ケアを重視している。これは,夜間救急での小児のたらい回しが大きな社会問題になるなど,専門医療の行き過ぎや救急医療の立ち遅れが指摘されたからだ。従って,諸君の研修においても,救急が大きな比重を占めるだろう。そこには研修医を救急医療の主な担い手と考える病院側の思惑もある。
しかし,残念ながら諸君の働く多くの病院で,救急のスタッフが揃っているわけではない。夜間の当直も,内科や外科のスタッフが「困った時に呼べば来てくれる」程度のサポートしかないところも多いだろう。そこで「救急マニュアル」のお世話になるわけだが,ここにベテランの看護師とともに諸君を助けてくれる強力な助っ人が登場した。それが,本書,田中和豊先生の『問題解決型救急初期診療』だ。
救急外来の「なぜ」を解説
この本は救急外来で診ることの多い主要25症候に対するアプローチと処置が中心だが,最大の特徴は「なぜ」そうアプローチするのか,「なぜ」その所見が大切なのか,「なぜ」その検査をするのか,「なぜ」その薬を使うのか。それらの理由とステップがきちんと書かれている点だ。理由も書かれているから記憶にも残る。出典もアメリカ救急医学会のテキストなど,信頼の置けるものだ。 診療の合間にパッと参照することも出来るが,本書の価値は「読める」ことにある。患者さんを診たらすぐ本をめくってチェックしてみる。繰り返し実践し,読んで理解して欲しい。きっと救急外来の手薄なサポートを補う,諸君のよき「指導医」になってくれる。
B6変・頁512 定価(本体4,800円+税)医学書院