医学界新聞

 

よりよい生存のための「人間の安全保障」

武見太郎記念国際シンポジウム開催


 「武見太郎記念国際シンポジウム」が,昨(2003)年12月13日,東京有楽町の東京国際フォーラムにおいて,「安全保障の視点から-人類の生存秩序と健康」をテーマに開催された。本シンポジウムは四半世紀にわたり日本医師会長を務め,戦後の日本医療の発展に尽力した故・武見太郎氏の没後20年を記念して行なわれたもので,「Human Securityの理論と実践」(司会=(財)日本国際交流センター理事長 山本正氏),「よりよき生存とは? 武見太郎の今日的意義」(司会=参議院議員 武見敬三氏),「伝統医療とよりよき生存」(司会=国際医療福祉大総長 大谷藤郎氏)の3つのテーマが議論された。
 「Human Securityの理論と実践」では,日本政府の発案により設立された「人間の安全保障委員会」で共同議長を務めたアマルティア・セン氏(ケンブリッジ大学長・ノーベル経済学賞受賞者)と緒方貞子氏(JICA理事長)による講演の他,特別発言としてエンマ・ロスチャイルド氏(ケンブリッジ大教授),リンカーン・チェン氏(ハーバード大教授)の4名が登壇した。この中でアマルティア・セン氏は健康の安全保障に言及し,安価に命が救える薬剤を利用可能にすることなどの重要性を指摘したうえで,医療の安全保障には全人的努力が必要になると述べた。また安全保障に関するリソースの問題についても触れ,「命を破壊するリソースは流れやすく,命を守るためのリソースは流れにくい」と指摘した。