日本の心臓移植を考える
第11回トリオ・ジャパン・セミナー開催される

島田氏は1995年に拡張型心筋症と診断され,バチスタ手術を受けて一度は日常生活に復帰した。しかし2000年に補助人工心臓を装着しながらの生活となり,心臓移植待機リストに登録したものの,5か月後に国内での移植を断念。アメリカで心臓移植を受けた。
氏は「海外で移植を受ける場合,渡航や手術の高額な費用だけでなく,受け入れ先の病院探しや外国で生活することになる家族など,さまざまな問題がある」と指摘,「心臓移植にいたるまでの道のりは長く,困難も多い。患者は精神的なタフさを要求される」と感想を述べた。
南氏は臓器移植が日本において定着しない理由として「脳死や死体についての欧米との宗教観の違い」,「ドナーカードや遺族の意思表示に関する臓器移植法の問題」をあげた。そして「ドナーカード所持者が脳死になればそれは死として認められるが,所持していない人では心停止が死となる」と述べ,現状の法律では「人の死が2種類ある」ことを指摘。「できるだけ多くの人に『脳死』,『臓器移植』の意義を知ってもらい,医療制度を含めた法改正が必要である」と強調した。
最後に登壇した南淵氏は,日本の心臓外科医の年間手術数が欧米に比べて少ないことを指摘。「患者数に比べて心臓外科手術を行なう施設が多すぎることもあるが,手術よりも研究や論文を重視する傾向が背景にあるのではないか」と述べた。
また,会場からは「心臓外科医としての心構え」について質問があり,「失敗を経験して『怖さ』を感じるようになる。ミスはそうした怖さを忘れた時に起こるもので,集中力を維持するためには必要だと思っています」と答えた。
氏は最後に「インフォームドコンセントやメディカルコーディネーターといった概念は臓器移植をきっかけに日本に浸透してきた。臓器移植は医療において鎖国状態にある日本にとっての窓となるのではないか」と述べて締めくくった。