医学界新聞

 

がん患者のサポートグループを提唱

――日赤看護大招待講演の話題より


告知後の精神サポートが不十分

 さる10月11日,日本赤十字看護大学にて,キャサリン・クラッセン氏(スタンフォード大・臨床心理士)による講演「アメリカにおけるがん患者のためのサポートグループの実際」が行なわれた。
 クラッセン氏は1980年代より,デイビッド・スピーゲル氏(スタンフォード大)とともに,がん患者(主に乳がん)を対象としたグループを運営し,その効果を研究してきた。今回の講演では2時間にわたり,グループによる介入の効果とグループの運営,およびファシリテータの育成などが語られた。
 医学の進歩により,がんが不治の病から慢性疾患へとなってきてはいるものの,がんを告知された患者にとっては死との恐怖が常につきまとうもの。クラッセン氏は「インフォームド・コンセントはしきりに叫ばれても,その後の患者の精神面をサポートする方法についてはまだ不十分」と現状を分析。患者同士が患者会を結成するケースも多いが,氏の場合,心理学や精神医学について教育を受けた医療職者や臨床心理士をリーダーとする支持・感情表出型のグループによる介入を提唱した。

支持・感情表出型グループ療法の実際を説明

 この支持・感情表出型グループ療法とは,メンバーが互いに支持しあい,疾患に伴う体験を語り合い,他の人とは共有できない感情や不安などを表出できるようにするもの。グループの目標は,身体的な変化を受け入れられるようになる,家族や社会からサポートを得る方法を学ぶ,人生における優先順位を再構築する,など多岐にわたり,「患者が実存的問題(意味,自由,孤独,死などの問題)に取り組めるようになることをめざしている」と語った。
 また,グループを運営するファシリテータについては,「がん患者の心理面をサポートするという役割を果たすためにメンタルヘルスケアの教育が必要である」と強調し,サポートグループ運営マニュアルの作成やワークショップの開催などトレーニングプログラムがあることが望ましいと説明した。
 講演後,会場からはグループの規模や分け方について,患者会との違いについて,また,グループの中に亡くなった人が出た場合の他のメンバーへの影響についてなど多数の質問がなされた。
 なお,この講演会は日赤看護大の医療相談システム研究会が主催。当研究会は7年前より「がん患者のサポート」について研究しており,メンバーが渡米した折に「サポートグループ」の存在を知り注目しはじめた。3年前より「グループを運営するファシリテータの育成」を課題としながら,サポートグループをさらに研究し,クラッセン,スピーゲル両氏の共著「Support Group for Cancer Patients」と巡り会い,今回の講演会を企画するに至ったという。

先に述べたクラッセン,スピーゲル両氏の共著は,翻訳出版されました(『がん患者と家族のためのサポートグループ』医学書院刊)。