医学界新聞

 

「DPCに基づく包括支払い制度」


 2003年4月から全国82の特定機能病院においてDPC(Diagnosis Procedure Combination;診断群分類)に基づく,医療機関別包括評価による医療費の定額支払い制度(以下,包括支払い制度)が開始された。
 わが国ではこれまで出来高払いによって医療費の算定が行なわれてきた。しかし,疾病構造の変化に伴い国民医療費は急増,99年度には30兆円を超え,低迷する経済状況の中,医療保険制度全般にわたる見直しが議論されるようになった。
 出来高払い制度とは異なり,包括支払い制度では診断群分類ごとの定額支払いとなるため,国民医療費の抑制につながるのではないかと期待されている。また,DPCによって診断・診療行為などの医療情報が標準化されることによって,経済的・技術的両側面から医療の質を評価していくことが可能になると考えられている。
 DPCとは,米国で使用されている診断群分類であるDRG(Diagnosis Related Groups)をもとに開発された日本独自の診断群分類であり,その大きな特徴は,分類がDRGのように「診断」だけではなく,「診断と診療行為の組み合わせ」に基づいて行なわれる点にある。具体的には「医療資源を最も投入した傷病名」がICD(International Classification of Diseases)によって分類された後,診療行為,重傷度などによってさらに分類されることとなる。
 DPCの分類項目は現在2552分類であるが,包括評価対象となる診断群分類は1860分類であり,これに該当しない患者は従来どおりの出来高払いとなる。また,今回導入された包括評価の範囲は主にホスピタルフィー的要素(入院基本料,検査,画像診断,投薬,注射,1000点未満の処置など)であり,ドクターフィー的要素(手術料,麻酔料,1000点以上の処置など)は対象外となる。
 今回,包括支払い制度導入の対象となったのは前記の特定機能病院のみだが,2002年12月の「医療保険制度の体系の在り方」および「診療報酬体系の見直し」についての厚労省試案には,急性期入院医療についてDPCによる包括評価の実施に向けて検討することが明記されており,今学術集会でもいくつかの演者が所属する施設での取り組みを発表。診療情報管理責任者はもちろん,医療関係者の注目が高まっている。

[編集室]

●参考文献 松田晋哉編著:21世紀の医療と診断群分類-DPCの実践とその可能性,じほう,2003年