医学界新聞

 

日本小児看護学会
第13回学術集会を開催して

飯村直子(日本赤十字看護大学)


はじめに

 さる7月26日-27日,千葉市の幕張メッセ国際会議場において,日本小児看護学会第13回学術集会を筒井真優美会長(日本赤十字看護大学)のもとで開催した。
 予想を遙かに上回る1,200人近くの参加者が来場され,講演集が1日目の午前中に品切れになる等の混乱はあったが,無事に終了することができ,今は感謝の気持ちでいっぱいである。

第13回学術集会の特徴

 今回の学術集会では,口演・示説を合わせて128演題の発表があったが,このうち約60題が「病院」「保健所」「療育相談センター」などの現場で働く看護職の方々の発表であり,参加者も現場の看護職の方が多かった。これが,今回の学術集会の最大の特徴であったと言えるであろう。

企画に際して大切にしたこと

 企画の段階から,病院や地域などの現場で働いている方々にできるだけ多く参加していただける学術集会を開きたいと願っていた。それは,昨今の少子高齢化の流れの中で,小児看護を取り巻く環境がとても厳しいという現実があるからである。
 例えば,小児病棟や小児科病棟の多くが閉鎖・縮小され,混合病棟化が進んでいる。一方で入院している子どもたちの病状は重症化し,たくさんの機械やチューブ類に取り囲まれた子ども達のケアは一瞬たりとも気の抜けないものになっている。
 さらにこのような子どもたちを抱えた家族の負担も重い。こうした状況の中で子どもと家族により良いケアを提供しようと小児の看護師たちは日々模索している。
 このような看護職の方々が日頃実践している看護を振り返り,その意味を確認し,自信を持てる学術集会,またお互いに交流し,学び合い,力をもらえる学術集会にしたいということが企画委員たちの一致した願いであった。
 そこで,今回の学術集会は抽象的なことに終わるのではなく,小児の看護師たちが日常的に行なっている小児看護の技について具体的に取り上げていこうと考え,テーマを「小児看護における技の探求:The Art of Child and Family Nursing」とし,このテーマに沿って「会長講演」「特別講演」「シンポジウム」「テーマセッション」を企画した。

テーマセッション

 ここでは,特に参加者同士の交流が多く見られたテーマセッションについて報告する。
 2日目のテーマセッションは,朝から会場に入りきれない人が出るほどの盛況であった。特に「学術集会企画」として,全国の会員から広く公募した「探求しよう! 子どもが自由になれるライン固定」では,点滴固定など日頃病棟で工夫している成果を発表していただいた。その場でさまざまな意見交換が行なわれ,終了後もパネルの前で交流が続いた。
 同じ時間帯に行なわれた「小児看護専門看護師のとりくみ」は,6人の小児看護専門看護師達が現在行なっている具体的な活動内容を報告し,参加者からは臨床の場での専門看護師との協働および活用について熱心な質問があり,ディスカッションが行なわれた。
 午後から行なわれたもう1つの「学術集会企画セッション:体験しよう! 呼吸器ケア」では,身近な呼吸器ケアについて,静岡県立子ども病院の呼吸療法の専門家稲員恵美さんが,子どもに苦痛を与えず呼吸状態を改善する手技や,体位管理の基礎知識を丁寧に紹介してくださった。参加者から多くの質問があり,ここでもセッション終了後,質問の輪が続いていた。
 また,「検査・処置を受ける子どもへの説明と納得に関するケアモデル」のセッションに参加された方からは,学術集会終了後,ホームページの掲示板に「子どもと家族が力を発揮できる援助ができるようになりたい! 子どもが納得できる説明についての認識をもっと広めたい! と感じました」というご意見をいただいた。

おわりに

 学術集会終了後,参加者の何人かの方から「(いろいろ興味深い発表が複数の会場で同時にあり)自分の身体が1つしかないことがとても残念でした」というご意見をいただいた。
 「次の日から,早速病棟での技術を見直しています」と連絡をくださった方もいた。また,「学会に参加して小児看護をすること,めざすこと,もっと自信を持ってもいいんだ」という声があった。
 今回の学術集会では,一般的にはなかなか理解されない小児看護の独自の技を,できるだけ言語化する,つまりそれらを「ことば」にし,「見える形」にし,「共有」できるようにすることを意図した。
 それぞれの参加者が学術集会で得たものが,現場の看護の現実的な問題解決につながり,明日からすぐに役立つものとなるばかりでなく,子どもの人権を守り,子どもと家族の看護の向上をもたらすものとしてさらに発展していくことを願っている。