医学界新聞

 

介護保険制度の検証がはじまる

第1回高齢者リハビリテーション研究会より




 第1回高齢者リハビリテーション研究会が,さる7月10日,全社協・灘尾ホールにおいて開催された。
 本研究会は,厚労省老健局長の私的研究会に位置づけられ,今後の高齢者リハビリテーションや介護保険制度のあり方について検討する目的で設置されたもの。上田敏氏(日本障害者リハビリテーション協会)を座長に,医師,PT・OT・ST,看護師,ケアマネジャー,患者会など,各界の有識者計20名で委員が構成される。
 研究会においての具体的な検討事項は次の5つ。
1)要介護状態にならないようにする予防的リハビリテーション
2)介護が必要となってもできるだけ重度にならないような,各ステージ毎のリハビリテーションの提供体制
3)福祉用具・住宅改修の提供体制
4)利用者のニーズに応じた多様なリハビリテーション提供体制
5)地域リハビリテーション提供システム

 なお,これらは先にまとめられた「高齢者介護研究会報告書」(6月26日付)で指摘された問題点を受けて掲げられたもの。

各委員が発想の転換を求める

 1回目の今回は,20各の委員が紹介され,それぞれが簡単に持論を述べたあと,5名の委員によるプレゼンテーションが行なわれた。
 上田氏は,ICF(国際生活機能分類)の概念に沿って,リハビリテーションの基本的な考え方を説明。従来のように心身機能・身体構造にばかり目を向けるのではなく,「活動」レベルのプラス面を増やす訓練の重要性を強調した。また,脳卒中や骨折などの急性発症疾患ばかりではなく,日本の寝たきりの大半を占める慢性進行疾患・廃用症候群の悪循環にも,今後は目を向けるべきだと指摘した。
 山口武典氏(国立循環器病センター)は,要介護の原因疾患として大きな割合を占める脳卒中について,進歩を続ける診療法を紹介。拡散強調MRIなど画像診断の進歩により超早期診断が可能となり,治療法も確立したことから,適切な診療で脳卒中は治せることを示した。
 鈴木隆雄氏(東京都老人総合研究所)は,転倒・骨折予防を中心に講演。大腿骨頸部骨折者は年々増加し,医療費高騰の一因となっていることを指摘。今後,後期高齢者が増加するなかで,転倒予防は一層重要性を増すとして,転倒予防教室などの試みを紹介した。
 浜村明徳氏(小倉リハビリテーション病院)は,地域リハビリテーションシステムの構築について,80床の回復期リハ病棟を持つ小倉リハ病院を例に説明。患者の退院の1か月前からケアマネジャーが関与し,患者と家族も含めたカンファレンスに参加,住宅改修の準備を事前に進めるなどの実践を報告した。
 大川弥生氏(国立長寿医療研究センター)は,日本における廃用症候群に対する認識が不十分であると強調。いったん廃用症候群が生じるれば生活機能全体がさらに低下する。この悪循環をつくらないためにも,廃用症候群の原因への対策と,生活全般の活発化が必要だと指摘した。特に,病気の時に安静第一と考える「安静・不活発の害」を,専門職・一般社会ともに認識すべきとした。
 2回目以降の研究会では,前述の5つの検討事項を順に議論。月1回のペースで開催され,年内に中間報告書がまとめられる予定だ。2003年度の介護報酬改定では,加算の新設や計画書の作成など内容が大きく変わり,本研究会の動向も注目される。