医学界新聞

 

シリーズ   私はこうして研修病院を選んだ

医学生へのアドバイス


■「どんな医師になりたいか」が大切

中村明澄(筑波大学附属病院総合医コース,元国立病院東京医療センター研修医)

◆どのような基準で研修病院を選んだか?
 私が研修病院を選んだ時に大切にしていたことは以下の4つです。
(1)病院スタッフの雰囲気がよい(廊下での気持ちよい挨拶・気軽に相談している様子)
(2)指導医が教育熱心である(研修医の質問に真剣に答えてくれる)
(3)研修医同士が楽しそう・生き生きしている
(4)自分がそこに入っても違和感がない・居心地がいい
 もちろん研修内容も大切であり,私が東京医療センターを選んだのはスーパーローテート方式であること,総合診療科ローテート中に研修医も外来研修ができることなどが大きなポイントです。
 しかし,初期研修を終えた今,「よい研修」をするために,最も大切なことは「自分の目標に向かってモチベーションを保ち続ける」ことだとつくづく感じています。医師としての研修は初期研修で終わりではないので,足りないことは後からいくらでも補うことができます。しかし,「モチベーション」をなくしてしまうと「よい研修」はできません。そのために上記の4つのポイントは欠かせないものだと思います。

◆情報収集はどうすべきか?
 最近はホームページ(HP)が非常に充実しているので,行きたいと思った病院のHPにまずアクセスするのがよいでしょう。病院実習の感想が掲載されているHPにアクセスしたり,先輩に相談するのもよいと思います。偏りのないいろいろな意見を集めることはとても参考になります。ただ,その意見はあくまで「その人にとって」のよし悪しでしですから,実際に見学させていただき,直接自分の肌で感じとることも大切だと思います。

◆病院実習にあたってのアドバイス
(1)病院は患者さんのためにある
 自分の進路選択のことで頭がいっぱいになりがちですが,病院は患者さんの診療のために動いているので,診療に支障を来さないよう十分配慮しましょう。
(2)挨拶・自己紹介
 実習中,病院内のいろいろな場所に行くことになります。行った先で気持ちのよい挨拶と自己紹介をしましょう。
(3)研修医から話を聞く
 研修のことは研修医が一番よく知っています。生の声を聞くチャンスですから,研修医の時間がとれる時にどんどん質問をぶつけて話をききましょう!
(4)知識のないことを心配せず,萎縮しない
 マッチングの開始で,実習中も採点されているのではと心配になると思います。しかしほとんどの場合,知識よりも積極性・協調性が重視されます。いつもどおり振舞いましょう!

◆試験・面接に臨む際のアドバイス
 「目標」と「やる気」と「協調性」が大切です。どんな医師をめざして,どんな研修をしたいのか? その気持ちをアピールしましょう。採用試験のためにではなく,日ごろから,よい医師になるために,知識を磨き,人として医師としての態度を磨いていきましょう。それが試験・面接に表れるはずです。




 中村明澄氏
東京女子医科大学卒業。6年生時,家庭医療学会学生・研修医部会を発足させた。国立病院東京医療センター初期研修医・総合診療科レジデントを経て,現在,筑波大学附属病院総合医コースレジデントとして学生教育に携わりながら後期研修中。その傍ら患者さんのためのボランティアミュージカル公演を続けている。



■さまざまな体験が進路選択には有益

久保田智子(亀田総合病院・研修医2年)

◆どのような基準で研修病院を選んだか?
 私は6年生の頃,将来は家庭医やプライマリケアもいいなあと思っていましたが,その前に内科系をひととおり回りたいという気持ちがありました。当院のプログラムは,2年間内科,外科,小児科,麻酔科,救急をはじめとしたローテートをした後に,3年目以降に家庭医療を学ぶプログラムがあったのが研修先として選んだきっかけです。それ以外のことは恥ずかしながら,あんまり考えていませんでした。
 そこで,研修も1年ちょっと終わった今の時点で思うことを書いてみたいと思います。
 研修のよし悪しは何で決まるのでしょうか? プログラムや指導体制などよりも重要なのは,そこで働いている人間だな,と思う今日この頃です。ロールモデルになる指導医や先輩がいて,一緒に頑張り刺激しあえる仲間がいることが大切だと思います。最終的には学ぶのは自分自身ですが,私自身振り返ってみると,その学びのきっかけや主体性,モチベーションは患者さんをはじめ多くの仲間に支えられていることを実感します。
 実習に来られたら,そこでいきいき頑張ってる人がいるか。こんな医者になりたいな,と思わせる人がいるか。コメディカルスタッフとの良好な関係があるか。どんな雰囲気の病棟で,どんな研修をして,どんな風にストレスマネジメントをしているか。そういったものを自分の目で見て,自分が働きたい職場かどうかを確かめるとよいかと思います。私は,愚痴を言い合い励まし合える仲間に恵まれたことをとても感謝しています。

◆情報収集はどうすべきか?
 私自身はすぐ近くに同じ方向性を持って頑張っている友人がいて,それぞれの目標を話し合って,互いに情報の交換をしてきました。普段からメーリングリストやHP,雑誌など自分の将来やりたいことに関してアンテナを張っておくことが大切だと思います。
 また,セミナーなどに積極的に参加したり,研修病院に実習に行ったりすると,そこにはすばらしい出会いがあって,大学の垣根を越えた同志の輪が広がったりします。彼らから教えてもらったことはすごく多く,とても感謝しています。手近な方法として,実習に行ってロールモデルになるような先生を見つけたら,その先生にどこで,どんな点に気をつけて研修をしてきたかを尋ねてみるのもよいかもしれません。

◆病院実習にあたってのアドバイス
 自分はこれができる,こうしたい,という気持ちをどんどんと表してくれるのもいいのですが,その一方で周囲との協調性がある人に私はより魅力を感じます。気持ちのよい挨拶ができるか,服装や患者さんとの接し方はどうか,患者さんの気持ちに配慮できるか,など社会人として普通に必要とされるマナーが守れる人は一緒にいて気持ちがいいですよね。
 評価を意識して肩肘を張らなくてもいいと思います。普通の人でいてください。

◆試験・面接に臨む際のアドバイス
 試験や面接はたった数時間で終わってしまいます。自分の考えていること,自分らしさを存分に出してください。数時間の採用試験よりも何よりも,6年間の学生生活を豊かなものにしてほしいと思います。試験のための勉強よりも,やりたいことをいろいろ探してください。
 大学の教育で見られるのも,医療のなかの狭い範囲でしかないので,救急医療,診療所や緩和ケア,在宅医療,デイケア,保健所などさまざまな分野を見てみてはどうでしょうか。そうやっていろいろと体験することが将来の進路を決めるにも有益なものになるはずです。頑張ってくださいね。




久保田智子氏
熊本大学医学部2002年卒業。幼い頃のかかりつけ医に憧れて,医学部に入学。患者さんの苦しみをきちんと聴ける医師をめざし,心療内科や緩和ケア病棟の実習を体験。それらの経験の中で,家族を含め包括的に,末永くおつき合いしていく家庭医療に関心を持つようになった。現在は家庭医を志して亀田総合病院で研修中。患者さんらしさを応援し,寄り添って共に歩める人になりたい,と思っている。趣味は油絵,陶芸,紅茶と食べ歩き。