医学界新聞

 

精神科看護の質向上をめざして

第28回日本精神科看護学会開催される




 日本精神科看護技術協会(=以下,日精看,藤丸成会長)の第28回総会および精神科看護学会が,さる5月29日-31日(28日は市民講演会および前夜祭)の3日間にわたり,沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターにおいて「精神科看護の質の向上とマンパワーの確保」をメインテーマに開催された。
 本会では,多数の来賓が招かれた式典が行なわれた他,梶本伸一氏(十全会十全第二病院)による,メインテーマを冠した基調講演,シンポジウム「いわゆる触法精神障害者の看護について」などを企画。また,それぞれの施設における研究発表の場も設けられ,参加者の熱心な議論が見られた。さらに,会期中はリスクマネジメント,情報開示,教育-実習指導,地域ケア,隔離・拘束,コスト意識など,今後の精神科看護に求められる重要課題についての分科会も催された。


経営にも積極的に参画すべき

 本会のメインテーマでもある「精神科看護の質の向上とマンパワーの確保」を題として行なわれた基調講演で梶本氏はまず,「看護の質」について「知識,技術を前提とした看護実践能力の可否」と定義。そのうえで,質の向上に必要なこととしてまず,「職業人としての看護者自身の自立」をあげ,常に自身のケアの結果について考えることや,新人や学生の素朴な疑問を評価できる姿勢の大切さを説いた。
 氏は,看護者の自立のために,看護理念,教育目的を明確にした教育システムを実現させるなどといった組織としての自立が必要とし,自身の施設において,看護職である梶本氏自身が病院の多くの事業の中心として活動した経験を紹介。「よい医療を展開しようとしても,母体である病院の経済的根拠がなければ実現は難しい。看護職が積極的に病院経営に参画することで医療,看護の質が保証でき,効率的,効果的な看護が展開できる」と述べ,看護職の積極的な経営への働きかけによる改革の可能性を示唆した。
 また,質の保証のためには,チーム構成に必要なマンパワーの確保が不可欠であると述べ,厚労省の調査を例に,精神科医療におけるマンパワーは他科に比べ著しく不足している点を指摘。今現在の精神科看護職者の離職をいかにして防ぐかが大きな課題であるとした。加えて,日精看の看護職員確保調査研究班による看護職離職者についての調査結果から,離職が多いのは20代で,精神科勤務期間5年未満の者であったと報告。離職者に対するアンケート結果では,精神科への配属を希望していた者が45%に達し,「嫌ではなかった」との回答を合わせれば,80%以上もの離職者が精神科への配属そのものへの不満はなかったと紹介。配属後の問題が離職の要因として大きいことを示唆した。

適切な対策で離職は防げる

 これらの結果が示唆する,離職防止に必要なものとして梶本氏は,「職業的アイデンティティが確立されるような教育システム」,「気軽に個人の意見やその主体性が尊重される職場環境の構築」などをあげた。加えて氏は,離職者のほとんどない「マグネットホスピタル」も現実に存在するとし,適切な対策によって離職を防ぐことは可能であることを強調。「医療と看護の質を保証しながら,人材の確保,育成を進めることが不可欠」と締めくくった。