医学界新聞

 

新臨床研修制度で医学生はどうする?

医学連大会開催「臨床研修」めぐりシンポ


 さる3月21-23日の3日間,東京の文京区民センター他で,医学連第20回定期全国大会が開催された。医学連の正式名称は全日本医学生自治会連合。国公立大学医学部の約半数にあたる26大学の医学部自治会が加盟しており,例年この時期に各自治会の代表者らによる定期全国大会がもたれる。
 今年の定期全国大会では,活動方針の討論・決議が行なわれた他,明年に迫った新臨床研修制度の実施を前に,「卒後研修を考えるシンポジウム」が企画され,活発な討論が行なわれた。




 シンポジストを務めたのは,前野哲博氏(筑波大附属病院卒後臨床研修部),安次嶺馨氏(沖縄県立中部病院 副院長),武藤糾明氏(NPO法人患者の権利オンブズマン理事長代理 弁護士)の3氏。それぞれの立場から,新しい臨床研修制度についての考えを述べた。
 前野氏は,まず「社会から期待されている医師像と現行の医師養成方法にはズレがある。その現状を是正し,社会のニーズに合った医師を,少なくとも初期の2年間は養成しようというのが,新しい臨床研修制度の趣旨であり,医学生は社会の期待に応えるべきだ」と必修化の趣旨を説明。そのうえで,新制度において必須となるスーパーローテーション方式の研修システムについては,「意義と限界」を理解するのが大切であると指摘し,
(1)各ローテーションの1か月でなるべく多くの症例を経験すること
(2)緊急性を判断し,適切な初期診療ができるようになること
(3)当たり前の疾患を当たり前に診られるようになること
 の3点がもっとも重要な意義であるとした。
 一方,本年度にも実施されることが確実視されるマッチングについては,「見切り発車的な実施で,準備期間があまりにも短い」と述べた他,大学病院をはじめ多数の施設が参加する見込みであることから,「学生は,自らしっかり施設の適否を見きわめる必要がある。各施設のホームページなどが参考になる場合もある」と学生たちにアドバイスした。
 続いて,安次嶺氏は副院長を務める沖縄県立中部病院の優れた研修プログラムを紹介し,「これからは,大学病院だろうが民間病院だろうが,国際的なスタンダードをめざさなくてはならない。それを教えられる指導医が必要であるが,実はこの『優れた指導医』こそが日本の医療には欠けている」と指摘した。そのうえで新しい臨床研修制度については,すべての医師が「まず,ジェネラルな研修を行ない,そのうえで専門へ進む仕組みであり,医療の質を高めたり,優れた医師を育てるために必要だ」との考えを示した。
 さらに,安次嶺氏は「医局に巻かれるようではダメ。学生自身が,どこに行けば自分のやりたい医療ができるのか,探し求めていかなければならない。ただし,医師の一生は長く,この2年間だけですべてが決まるわけではないので,思い詰めるな」と助言した。
 また,武藤氏は弁護士の立場から,研修医の関与した医療事故の現状などについて解説。新しい臨床研修制度については,一定の評価をしながらも,「研修医の単独診療の問題が,今のまま続くようであれば,今回の改革は不十分と言わざるを得ない。研修医は加害者であり,被害者である状況だ」と述べた。そして医学生たちには「研修医として試行錯誤する中で常に問題意識を持っていてほしい。何よりも,良好な医師-患者関係を築くことが大切だ」と訴えた。