医学界新聞

 

2002年度先駆的保健活動交流推進事業

保健所保健活動モデル事業最終報告会開催




 日本看護協会による厚生労働省委託事業,2002(平成14)年度先駆的保健活動交流推進事業「保健所保健活動モデル事業」最終報告会が,さる3月8日に,東京・千代田区の大手町サンケイプラザにおいて開催された。「保健所保健活動モデル事業」は,2000年度よりモデル事業の実践を通して保健所保健師の力量を高め,保健所における保健師の新たな活動を具体化し,得られた成果を広く普及することを目的として行なわれているもの。
 最終年度となる今年度の事業報告会では,(1)「上越保健所圏域計画-あすなろファミリー計画21 啓発普及と保健活動の推進」(新潟県上越保健所 上野春代氏),(2)「伊集院保健所軽症うつ病対策事業」(鹿児島県伊集院保健所 川畑しおり),(3)「子どもの虐待予防システムの構築-地域における虐待予防システムの構築」(東京都南多摩保健所 高橋貴志子氏,高橋郁子氏)の3事業について報告された。

浮かび上がった問題点

 事業報告に先立って行なわれた基調講演「地域保健活動に求められる保健所保健師の力量とその育成」(石川県立看護大 金川克子氏)で金川氏は,「地域の保健師活動において専門看護師としての力量を持った人が必要になるのでは」と述べ,専門性をもった保健活動の必要性を強調。その他,保健師教育・研修の整備についてもより整備を進めなくてはならないとした。
 また,鼎談「保健所保健活動の展望と課題-保健所モデル事業の3年間を振り返って」(千葉大 石垣和子氏,山形県村山保健所 阿彦忠之氏,全国保健師長会 村田昌子氏)の中で阿彦氏は,保健所の再編・統合によって構造の変化が起きていることに関連して,「構造の変化で困ったと言うだけでなく,それによって生じるメリットを活かそうとする姿勢を持つことが大切」と述べた他,他地域への普及や普遍化を意識して,大学などの協力を得ながら活動を進めることの重要性も示した。
 一方,村田氏は,従来の縦割りの業務を見直し,発想を変えてチーム体制で事業を行なうことにより,保健所の専門性・技術力を生かすことができるようになった「アドベンチャーin HITACHI」(日立保健所機能強化事業)での自身の経験から,「保健師が保健師を育てるのではなく,他職種が保健師を育てる」と指摘。従来の連携は,市町村の保健師と保健所の保健師との「個の連携」であったとし,今後は,保健所と他の機関といった,「組織どうしの連携」が必要になると述べた。
 議論の終わりに石垣氏は,「モデル事業は終了したが,次の活動への力をつけることができた。活動のあり方を考えてみようと思う点がたくさん出てきたと思う」と,今後の保健所保健活動のあり方への期待を述べ,報告会のまとめとした。