医学界新聞

 

吉田富三生誕百周年記念公開講座開催


 癌病理学者・吉田富三の生誕百周年記念事業の一環として,公開講座「よくわかる『がん』の話」が,嶋多門実行委員長(福島県医師会長)のもと,さる2月8-9日の両日,郡山市のビッグ・アイにおいて開催された。基礎・社会・臨床医学のそれぞれの立場から市民向けの講演が企画され,一般市民から多くの参加者を集めた。
 初日には,樋野興夫氏(癌研実験病理部長)が「吉田富三先生について」と題して講演。大学で講師を務める立場から教育の問題に触れ,「分子について講義するのは簡単だが,人を教育することは難しくなった」と述べた。その上で吉田富三の残した功績として,世界初となった人工的な肝がん発生の成功や,「吉田肉腫」の発見の他,医療制度の改革や戦後の国語政策への提言をも行なってきたことを紹介し,「専門家が自身の専門外について語ることも重要」と指摘した。
 続いて内田宗寿氏(吉田富三記念館長)は,「吉田富三記念館について」と題して,記念館の設立理念や沿革を説明した。さらに,「医師は社会の優越者ではない」「医業には自己犠牲を伴う」「医事は自然に如かず」といった吉田富三の言葉を紹介するなど,医師のあり方についても提言を続けた吉田富三の一面を語った。
 なお,本公開講座を皮切りに,本年は吉田富三生誕100周年記念事業として日本医学会総会などにおいてもシンポジウムが企画される他,生誕100周年記念寄稿集の発行も予定されている。