医学界新聞

 

第5回日本腎不全看護学会が開催される




 第5回日本腎不全看護学会が,昨(2002)12月7-8日の両日,牛崎ルミ子会長(新生会第一病院)のもと,「腎不全看護の専門性の追求-技と心」をテーマに,名古屋市のテレピアホールで開催された。
 今学会では,会長講演「腎不全看護の専門性の追求」をはじめ,「透析医療経済と看護の質」,「透析患者の心と人生,われわれ治療者の心と人生-両者の心のまとまり(統合・一致)をめざしたい」の2題の教育講演,ワークショップ「腎不全患者のトータルケア-ライフスタイルにあった治療選択と看護」などが企画された。

「透析医療経済と看護の質」

 教育講演「透析医療経済と看護の質」で山崎親雄氏(増子記念病院)は,(1)医療と経済の接点,(2)保険診療と医療の質,(3)これからの透析と看護の質の視点から,透析医療経済と看護の質を考察。「余裕のある経営がよりよい透析医療につながる。セオリーを無視した今回(2002年)の診療報酬の改定は,今後の透析医療の質を下げる可能性もある」と前置きし,アメリカではプロバイダーによる透析施設経営が始まっているが,日本でも巨大透析チェーン店ができつつある状況を報告。また,「透析の質は診療報酬点数に比例する」として,その根拠を解説するとともに,現在の国民皆保険は,患者だけでなく医師にも有益な制度であることも説いた。さらに,「本当のチーム医療は透析にある。継続的で全人的な医療看護,病院機能評価受審に貢献するなど,新しい医療は透析から展開された」と指摘し,「質が確保され,安全,快適で,施設サービスが行き届き,情報の提供・共有ができることが,良質な透析医療と言える」と強調した。

「腎不全患者のトータルケア」

 一方,ワークショップ「腎不全患者のトータルケア-ライフスタイルにあった治療選択と看護」(座長=増子記念病院 佐藤久光氏,済生会八幡総合病院 波多野照子氏)には,市原美恵子氏(増子記念病院),藤崎百合子氏(名古屋第二日赤病院),吉岡順子(健腎会おがわクリニック),長尾尋智氏(メディカルサテライト岩倉・臨床工学技士),藤田譲氏(白鷺病院・ソーシャルワーカー)が登壇。
 市原氏は,腎不全医療のトータルケアについて,血液透析の視点から検討。「患者の将来人生設計やライフスタイルを重視し,その個別性に応じた柔軟な対応の重要性を考えることができた」と述べた。
 藤崎氏は,腎移植に言及し,名古屋第二日赤病院腎臓病総合医療センターの現状を報告。2002年8月現在で生体腎移植が494例,献腎移植156例,小児腎移植14例行なっており,国内2位にあることを指摘し移植希望の動機や術前後,および退院前の看護のポイントなどを解説した。
 また吉岡氏は,「高齢・要介護者の在宅CAPD療法」に関して,その事例を通して在宅での治療と生活支援の現状を報告。長尾氏は,臨床工学技士の立場で,透析チームの一員として活動をしている実態を述べるとともに,在宅透析の必要性を説いた。
 藤田氏は,ソーシャルワーカーは,腎不全患者の慢性的なストレスや患者ニーズを汲み取るだけはなく,家族や周囲を含むコミュニティ,ライフサイクルを視野に入れた患者の主体的取り組みを支援する役割があるとして,「生活モデルの視点からの『患者中心のケア』の実践,理論と実証による科学的根拠に基づくケアの提供などが,トータルケアを成立させる要因」と述べた。
 なお,同学会では3年以上の透析看護の経験を有する看護師を対象として,日本透析医学会,日本腎臓学会,日本移植学会と合同で認定委員会を設け,独自の認定看護師である透析療法看護師(ネフロロジーナース)の育成を計画していることが,総会の場で説明された。現段階ではまだ「案」とするものの,認定には専門基礎科目,専門科目の履修,および事例の提出などが必要要件となることなどが紹介された。