医学界新聞

 

リハ看護継続教育プログラムの一貫として

第9回国際リハビリテーション看護研究会公開研修会開催

【報告者】小林幸子(茨城県立医療大学附属病院副看護部長)


全国のリハ看護関係者が一堂に

 国際リハビリテーション(以下,リハ)看護研究会主催による,第9回公開研修会が,さる11月23日,東京・荒川区の東京都立保健科学大学において開催された。
 国際リハ看護研究会は,リハ看護の向上をめざして,過去8回にわたり諸外国およびわが国のリハ看護の現状と課題をテーマに公開研修会を開催してきた。今回の研修会は本紙(第2491号)に紹介されたリハ看護継続教育プログラムの一環としたもので,全国の看護教育・研究者や急性期リハ病院,在宅でのリハ看護実践者など,さまざまな領域からの参加者が一堂に会し,リハ看護について理解を深めた。
 なお今研修会では,森山美知子氏(広島大教授)による講演「家族看護モデル-アセスメントと援助の手引き」と,金子寿氏(Friendly Life Community:FLC会長,写真)による講演「障害を持って生活するということ」が行なわれた。2つの講演を通して,リハ看護に携わる実践者と教育・研究者の交流が深まり,専門職としての高い意識が感じられる充実した研修会となった。

家族看護モデルのリハ看護への活用

 「家族」の従来の定義は,婚姻・血縁あるいは養子縁組みの絆を重視した集団とされていたが,森山氏は,ロレイン・M・ライト氏(カナダ・カルガリー大)の「強い感情的な絆,帰属意識,そして,お互いの生活にかかわろうとする情動によって結ばれている個人の集合体を家族ととらえる」という定義に基づく「カルガリー家族看護モデルの理論」を紹介し,臨床実例を交えて講演された。
 氏は,「家族看護モデルの理論は,システム理論に基づいて家族をユニット(1つのまとまり)としてとらえ,家族員1人ひとりを個別に見るのではなく,メンバー間の相互作用を観察すること」,また,家族看護の目的については「疾病や疾患に関連して日々起こる問題に対処し,家族のセルフケア能力を高め,家族の成長を支援すること」であると強調。モビールを例にとり,家族にもたらされる内外のいろいろな出来事に影響を受け,揺れながら調整をとっている様子や,衝撃の度合によってバランスを崩す様を含めて,「家族」として紹介された。
 なお,家族介入については,情報から初回アセスメントをし,次に問題点に気づいたときに2次アセスメントを行なう。そして,分析に基づいて必ず仮説をたてて,目的を明らかにしてインタビューを行なうことが重要と指摘。その上で,会場の参加メンバーからの事例を基に,森山氏がインタビュー者として,また参加者が患者および家族・担当看護師の役割でロールプレイを行なうという,具体的な家族へのインタビューを実践した。短時間ではあったが,問題の焦点が浮かび上がるインタビュー場面を参加者全員が共有することができた。
 参加者からは,「家族看護の概念が新たになった」「家族看護について理論的介入のしかたが理解できた」,「家族へのアプローチのしかたは,常日頃悩んでいたのでとても参考になった」,「事例やロールプレイがわかりやすかった」,「具体例・実体験が多くとりいれられていてよかった」,「学術的かつ具体的でわかりやすく,自分自身のコミュニケーションを振り返ることができた」などの意見が聞かれ,今後の臨床での実践に活用できる手応えが感じられた。

障害を持って生活するということ

 金子氏は,高校時代に体操部に所属。放課後の練習中に,鉄棒から落下して頚髄損傷(C4)となり,転院した神奈川リハ病院で2年間の入院生活の後に在宅生活をされている。入院中に知り合った仲間との親睦会をきっかけとして1985年に「障害者が保護される存在ではなく,差別されることなく主体性を持って,地域で自立する会」である「FLC」を発足させ活躍されている。
 なお,同会の会員は,障害を持つ人(56名)と障害を持たない人(51名)で構成され,現在107名。その取り組みについては,(1)会員の親睦,(2)情報交換,(3)啓発活動,(4)対外活動,(5)行政への働きかけ,(6)途上国への支援・交流,(7)自立生活支援(ピアサポートおよび地域生活の支援)などを紹介し,幅広い活動の実態を述べた。さらに,運動が好きだった金子氏は,1992年に車椅子スラロームと出会い,1998年には第34回全国身体障害者スポーツ大会に参加したことなども報告した。
 また金子氏は,住宅改造および電動車椅子,環境制御装置使用での自宅での生活や,ピアカウンセリング,地域での活動なども紹介。マウススティックを使ってのパソコン使用を壇上で実践したが,ブラインドタッチと変わらないみごとな速さであった。
 なお参加者からは,「障害当事者の思いや実際の生活に触れる機会が今までなかったので刺激された」,「看護の原点を学ばせていただいた」,「生きるエネルギーをいただいた」,「障害者の立場からの意見や現場で大変な思いを乗り越えたことなどの本音が聞けたことがよかった」など多くの意見が寄せられ,多くの可能性・エネルギーをいただけた講演でもあった。

リハ看護の専門性を追究するために

 今年度,本研究会独自のリハ看護継続教育プログラムを,7月,9月,11月にのべ9日間,本会役員石鍋圭子(青森県立保健大教授)がプログラム開発担当として,本研究会独自に実施することができた。プログラム参加者からは,「リハ領域における看護の独自性について考えられるようになった」,「参加者との仲間づくりができ,これからの交流が楽しみ」などの意見が寄せられた。
 明年度の公開研修会は,2003年7月下旬,および9月上旬に開催を予定している。
◆連絡先:国際リハビリテーション看護研究会事務局
 FAX(0298)40-2295