医学界新聞

 

第17回家庭医療学研究会が開催される

臨床研修における家庭医の役割を模索


 さる11月9-10日,第17回家庭医療学研究会が,亀谷学大会長(聖マリアンナ医大)のもと,東京・港区の建築会館で開催された。本学会のメインテーマは「家庭医の教育を考える」。2004年に控えた臨床研修必修化を見据えた企画がなされた。

魅力ある家庭医育成に

 亀谷氏の会長講演「魅力ある家庭医を育てるために」では,日本では,「プライマリ・ケア能力」と「基本的臨床能力」が混同されている現状や,日本でプライマリ・ケア(PC)に携る医師の多くは,PC医としての専門教育を受けていない現状を指摘。医師であれば誰しもが身につけなければいけないのが「基本的臨床能力」であり,その上に家庭医の専門領域がある,と述べた。そして,日本の状況に即した家庭医の専門領域を積み上げるためには,「専門医としての家庭医教育が必要」と強調した。
 氏は最後に,「家庭医の診療はアートであり,日本でも世界に誇れる家庭医を育てていきたい」と結んだ。

臨床研修のニュービジョン

 厚生労働省は,「臨床研修病院の指定基準」(案)の中で,2年間の初期研修のうち初年度には内科,外科,救急部門(麻酔科を含む)を12か月(内科は6か月以上)の研修,2年目には「小児科,産婦人科,精神科,地域保健・医療」を,各3か月を1つの目安として1か月以上研修すべき」との考えを示している。つまり,医師としての基本的な診療能力の範疇に,地域医療の要素が加えられたことになる。
 このような流れもあり,PC教育に関連する7団体で「プライマリ・ケア教育連絡協議会」()を発足させ,今年8月,厚生労働省医政局に卒後臨床研修に関する要望書を提出した。その中で,同会はPC研修には中小病院や診療所における外来・在宅医療の研修が不可欠であること,さらに加盟学会の活動が有効な研修資源であり,研修医の受け皿として本協議会が積極的にその役割を担う,という意志表示を行なった。
 今回企画されたシンポジウム「臨床研修ニュービジョン-臨床研修の資源について」(司会=三重大 津田司氏,佐賀医大小泉俊三氏)では,(1)日本外来小児科学会(五十嵐クリニック 五十嵐正紘氏),(2)家庭医療学研究会(岐阜大 藤崎和彦氏),(3)日本プライマリ・ケア学会(石橋クリニック 石橋幸重氏),(4)日本総合診療医学会(小泉氏),(5)地域医療振興協会(山田隆司氏),(6)在宅かかりつけ医を育てる会(東女医大第2病院 山中崇氏)の6団体が参加。新たな臨床研修制度の中で,各団体の教育資源を確認しあい,どのような形で研修を提供できるのかを議論する場となった。
 すべての口演終了後,フロアからは,研修医が望む教育をどの程度まで提供できるのか,現状ではまだ不安があるなど,多数の意見が飛び交った。このような議論を受けて,今後は団体間のネットワークを強化して,臨床研修に提供できる確認された。
 なお,本研究会は,11月11日をもって「日本家庭医療学会」と名称が変更された。総会では,本会代表の伴信太郎氏(名大)から,家庭医の専門医制度の設立が検討されていることも明らかにされた。特に本学会の活動は医学生・研修医らに注目され,最近ではその会員数を急速に増やしていることから,「組織強化を図り,活動を充実させたい」との意向が述べられた。

註:「プライマリ・ケア教育連絡協議会」
要望書を提出した7団体は(1)-(4),(6)と全国国保診療施設協議会,全国自治体病院協議会。現在は(1)-(6)の団体で主な活動を行なっている