医学界新聞

 

第52回アレルギー学会総会開催される

「アレルギー疾患の病因と治療」をテーマに




 第52回日本アレルギー学会が,さる11月28-30日の3日間,足立満会長(昭和大)のもと,横浜市のパシフィコ横浜において開催された。
 本学会は「アレルギー疾患の病因と治療-基礎研究の進歩とその臨床応用はどこまで進んだか」をテーマに,急速に解明されつつある気管支喘息への病態解明に迫る研究を展開する足立氏の会長講演をはじめ,特別講演やシンポジウムなど,国内外から一流の研究者・臨床医を招聘した多彩なプログラムが企画された。

ガイドラインは診療を変えたか

 特別企画「アレルギー性疾患治療ガイドラインは治療現場にどのような変化をもたらしたか」(司会=日本臨床アレルギー研宮本昭正氏,近畿大奈良病院 中島重徳氏,関西電力病院 三河春樹氏)では4氏登壇し,アレルギーに関連する4疾患のガイドラインが再考された。
 最初に牧野荘平氏(東京アレルギー疾患研)は,成人喘息に関するガイドラインの変遷を紹介。その後の方向性を決定した1995年のWHO/NHLBIのGlobal Initiative for Asthma(GINA)から,2002年には,厚生労働省「EBM喘息ガイドライン」,米国・NIHの「成人および5歳以上の小児における喘息管理のための段階的アプローチ:治療」など新ガイドラインが発表されたが,喘息診療の現場にガイドラインの浸透が見られ,喘息患者の救急外来受診や喘息死が減少していることを提示した。
 続いて,古庄巻史氏(北九州アレルギークリニック)は小児気管支喘息治療管理のガイドラインの改訂版(日本小児アレルギー学会発行,2002年)に触れ,批判の多かった複雑な薬物療法プランを,年齢別に4つの重症度と7つのステップへと簡素化されたことを紹介。また改訂作業時,GINAなど海外のガイドラインとの比較した際に,ステロイド薬吸入療法への躊躇が議論されたが,今改訂ではステロイド治療が中心となるなど,新たな方向性を示唆した。
 一方,石川哮氏(熊本大)は,1993年初版から2000年に改訂第3版まで発行された「鼻アレルギー診療ガイドライン」は,「コモン・ディジーズにもかかわらず,ほとんど知られていない」と印象を述べた。また耳鼻科医に行なったアンケートによると,回答者91名中ガイドラインを有しているのは38名,「実際の診療に参考になった」と答えたのはそのうち14名との結果も報告し,「治療現場への普及には努力が必要」との現状を述べた。
 山本昇壮氏(広島大)は,1980年代にアトピー性皮膚炎の治療をめぐって混乱が生じ,関連団体からガイドラインが続々と作成されたことを概説。その上で「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」に関するアンケートを実施したところ,「ガイドラインの登場が混乱の沈静化に寄与した」との回答が75%を占め,さらに診療現場での変化として,「医師の基本的治療概念が統一されてきた」,「治療に対する患者さんの理解が得られやすくなった」,「ステロイド外用薬に対する拒否反応が少なくなった」などの意見が上げられたことを報告した。

化学物質過敏症

 化学物質が人類の健康に及ぼす影響について,シンポジウム1「化学物質過敏症」(司会=北里研究所病院 石川哲氏,東医歯大 西川清氏)では,医学,建築,環境などの立場から,(1)診断・検査所見(北里研究所病院 宮田幹夫氏),(2)鑑別診断(愛知学泉大 鳥居新平氏),(3)実態調査(京大 内山厳雄氏),(4)病因と病態(国立環境研 藤巻秀和氏),(5)治療と対策-患者の治療(北里研究所病院 坂部貢氏),(6)治療と対策-環境対策(北里大 相澤好治氏)の6人が登壇。対応が困難とされる本症をめぐって最新の知見が論じられた。