医学界新聞

 

第3回日本クリニカルパス学会開催




 第3回日本クリニカルパス学会が,さる11月22-23日の両日,横浜市のパシフィコ横浜において開催された。「医療の新しい礎を目指して」をメインテーマに冠した本学会では,2題の教育講演,5題のシンポジウムの他,パネルディスカッションとワークショップもそれぞれ2題ずつが催され,会場に入りきれないほどの聴衆を集めた企画も見られた。

クリニカルパスの本質とは

 「クリニカルパスによる医療プロセス標準化への道-その可能性と課題」と題して教育講演を行なった飯塚悦功氏(東大)は,「医療プロセス」の要素として,(1)患者状態の把握,(2)目標とズレの認識,(3)処置・治療・経過観察の3要素をあげ,それらを繰り返すことで診療が進むとした。
 その上で,クリニカルパス(以下,パス)の現状として,「時間の経過とともに患者が標準的(典型的)に回復していく場合の医療プロセスの記述となっている」と指摘。さらに,しばしば「バリアンス」が問題点として取り上げられ,「医療にはそぐわない」との議論があがる点について,「本来は,『ズレ』こそが行動を起こす原点である」と述べ,具体的な対応として,患者の状態の変化・推移を「時間」ではなく「フェーズ」で捉えることや,大きな病態変化をも想定したパスの作成が必要とした。
 氏は,関連して「標準化」の持つ意味についても,「固定された方法を忠実に行なうことといった誤解がある」と指摘。その上で「標準化とは経験によってよいことがわかっている方法であり,知識を再利用するための手段」と改めて定義した。さらに,標準化はEBMなどで達成するものとし,パスは「適応型質保証プロセス」を実現するためにあると提言した。

体験から効率化を議論

 シンポジウム5「パスの記録の効率化」(座長=NTT東日本関東病院 小西敏郎氏)では,「オールインワンパスによる効率化」と題して,今田光一氏(黒部市民病院)が,医師記録,看護記録,指示箋,検温グラフを包括したオールインワンパスの導入により,記録時間,申し送り時間などの短縮が可能となったことを報告。その他,石原照夫氏(NTT東日本関東病院)が「電子カルテのパスの指示と記録」をテーマに,電子化されたパスについての経験を発表するなど,合わせて5名のシンポジストが登壇し,それぞれのパス導入の経験から,効率化をテーマに発表,議論を行なった。
 議論の終わりに小西氏は,「パスそのものへの理解が不足し,普及していない病院も多い」と現状を指摘。「各病院で発表会を行なうことで,感化される医師もある」と,医師に対してもパスへの理解を求めていく活動の必要性を示した。