医学界新聞

 

日本看護技術学会緊急フォーラム

「看護師と静脈注射について」を開催


「新たな看護のあり方に関する検討会」の中間報告を受けて

 第1回日本看護技術学会(健和会臨床看護学研究所長 川島みどり会長,本紙1面参照)開催前日にあたる10月19日に,同学会は緊急フォーラム「看護師と静脈注射について」(司会=健和会臨床看護学研究所 平松則子氏,聖路加看護大 香春知永氏)を,東京・文京区の文京シビックセンターで開催した。
 厚生労働省では,本紙2504号(9月30日付)で既報の通り,本年5月から「新たな看護のあり方に関する検討会」(座長=都立保健科学大 川村佐和子氏)を設置し,「看護師等による静脈注射の実施」などの意見をまとめていたが,さる9月6日にこれまでの論議を踏まえ中間報告を発表。同9月30日には,同省医政局長名で各都道府県知事あてに,「医師または歯科医師の指示の下に保健師,助産師,看護師および准看護師が行なう静脈注射は,保助看法第5条に規定する診療の補助行為の範疇として取り扱う」を主とする「看護師等による静脈注射の実施について」を通達した。
 今回の緊急フォーラム開催は,従来「看護師の業務外」とされていた行為が,時代の流れの中で解釈を変えた今回の通達をめぐって,個々の技術,システム,教育等の実態を踏まえ,安心で安全な技術を提供する上でクリアすべき問題は何かについて意見交流を図ることを目的としたもの。

静脈注射実施への課題を論議

 フォーラムには,看護行政の立場から勝又浜子氏(厚生労働省医政局看護課),静脈注射をしていない臨床の現場から小野寺綾子氏(神奈川県立がんセンター),基礎教育の立場から茂野香おる氏(千葉県立衛生短大),全部署で静脈注射を実施している臨床サイドから大森綏子氏(関西労災病院)が登壇した。
 勝又氏は,今回の通達に至るまでの経緯を報告。小野寺氏は,施設職員(看護師300名)を対象に行なった「静脈注射の実態調査」の結果から,静脈注射経験者は38%(うち62%が5年以上前)であり,「静脈注射への不安がある」は86%であったことなどを述べた。その上で,「抗癌剤」注射などへの拡大解釈の危惧や安全管理体制の強化を今後の課題とした。
 一方で茂野氏は,「与薬に関する教育内容は,徐々に縮小傾向にせざるを得ない状況にあり,学生が無資格者であることが最大のネック」とした上で,学生の質が多様化し,ますます不器用となり,心理的に注射針に抵抗を示す学生が出現してきている現況を報告。この学生の質をめぐっては,総合討論の場でも話題となった。なお大森氏は,「患者に安心と安全を保証するための検討課題」として,静脈注射技術の習得,薬剤に対する知識,「NO」と言える看護師の育成などをあげた。