医学界新聞

 

第34回聖路加看護大学セミナー開催




 第34回聖路加看護大学セミナー(旧聖路加看護大学公開講座,委員長=同大 岩井郁子氏)が,さる9月21日に,「Evidence-Based Nursing-看護実践へとつなげるこれからの研究・教育」をテーマに,東京・築地の聖路加看護大学で開催された。
 今セミナーでは,昨年の同セミナー(テーマ:「Evidence-Based Nursing(EBN)-その基本と実践・研究・教育への活用」)で講演をしたリンダ・ジョンストン氏(オーストラリア・メルボルン大準教授,ビクトリア看護実践研究センター副センター長)が再来日し,「エビデンスに基づく臨床実践の教育:生涯学習」および「EBN-今後の研究の方向性」と題する講演を行なった。
 一方,日本側からは数間恵子氏(東大大学院),宮下光令氏(同)が「大学院教育における論文クリティーク能力の育成-私たちのやり方」を,森明子氏(聖路加看護大)が「看護基礎教育におけるPBL(Prob-lem-Based Learning)-EBNとつながっていく学習方法」を,さらに岡田美賀子氏(聖路加国際病院)が,「臨床の場でのエビデンスの活用-Pain Control Nurseとしての活動」を講演。全演題の終了後には,講師全員が登壇したフォーラムを開催し,会場の参加者を交えて,「EBNと臨床実践をどう結びつけるか」「質の高い論文とするには」など,活発な意見が交わされた。

看護実践へとつなげるEBN

 なお,ジョンストン氏は講演の中で,「エビデンスに基づくヘルスケア技術は,専門的で高度な臨床実践には欠かせない」として,(1)研究結果からのエビデンス,(2)臨床経験に基づくエビデンス,(3)患者の意向・選択,(4)人的,経済的,環境的な資源の4つの要素からなる「EBNのモデル」を提示。
 一方で,「なぜ臨床家は研究結果を臨床に生かさなかったのか」について,1981年の調査結果からは,「研究結果に対して,問題意識を持たない,知らない,理解できない,読んでも信頼しない,臨床実践に応用する方法を知らない,利用できる環境にない」といった要素があったことを報告。それが1991年の調査では,「(1)看護師は自身が患者ケアの手順を変える権限を持っていないと感じている,(2)新しいアイデアを実施するための時間が十分でない,(3)看護師が研究結果を知らない」がトップ3であったと述べ,これが2000年になると,上記の(1)(2)が逆転し,新たに「(4)施設が新しい研究結果の実施に不適切だから」が3位に浮上したことを述べた。また,氏が所属する王立小児病院での障壁としては,上記の他に「(5)看護師に研究結果を読む時間がないから,(6)医師が新しい研究結果の実施に協力的でないから」があがった。氏はこれらを踏まえ,「臨床家はエビデンスに基づくヘルスケアを行なうトレーニングが必要」と指摘した。また,「研究なんて大嫌い」という看護師が多い中,解答可能な研究課題を形成する,データベースを検索する,論文の批判的吟味,統計に関する知識,得られた結果を臨床で実践するための戦略が,基礎的な技能として必要,とあげた。