医学界新聞

 

リンケージ-看護実践の拠りどころとなる研究

第28回日本看護研究学会が開催される


 第28回日本看護研究学会が,さる8月8-9日の両日,池田明子会長(北里大)のもと,「リンケージ-看護実践の拠りどころとなる研究」をメインテーマに,横浜市のパシフィコ横浜で開催された。
 今学会では,会長講演「看護実践・教育における対人関係論の活用-40年間の歩みをふりかえって」や,特別講演「脳化社会とエコロジー」(北里大 養老孟司氏)をはじめ,教育講演として,I「看護研究における倫理的課題」(岐阜県立看護大 グレッグ美鈴氏),II「質的研究の方法論を問う-グランデッド・セオリーに焦点を当てて」(立教大 木下康仁氏),III「生活援助技術の開発-研究成果と実践への活用」(筑波大 紙屋克子氏)の3題が行なわれた他,鼎談「看護専門職を育てる効果的なシステム」(司会=山梨県立看護大短大 倉田トシ子氏)やメインテーマに添ったシンポジウム「実践・教育・研究のリンケージ」(司会=山梨県立看護大 大島弓子氏,北里大 岡崎寿美子氏)を企画。また,一般演題は118群312題に及んだ。


看護の発展に必須となる研究者と臨床ナースのリンケージ

 シンポジウムでは,宇佐美しおり氏(熊本大医療短大,菊陽病院)が,精神看護専門師の立場から登壇。その活動を(1)ケアしにくい患者への直接的ケア,(2)スタッフや管理職へのコンサルテーション,(3)セルフケアなどの教育,(4)地域生活の促進と入院中の看護ケアなどの研究と紹介。その上で,実践と教育における課題や,実践・教育・研究のリンケージにおける連携の目的,目標の共有と役割の違いなどを明確にした。
 また,石川眞理子氏(東女医大)は,ETナースとしてその役割や仕事内容を紹介。臨床とのリンケージに関して,「専門ナースは,臨床の現場でその理念を技で示し,看護師は,そのケアモデルを見て学ぶことが効果的な学習である」などと述べた。
 北野庸子氏(東海大社会福祉学科)は,人工内耳リハビリテーション福祉の立場から登壇。学際的チームによる臨床実践と教育・研究活動には,(1)学際的アプローチの重要性を学ぶ,(2)専門家チームの中で自分の役割を理解すること,(3)患者の立場や役割を理解することが重要と報告した。
 佐藤芙佐子氏(三重大)は,アメリカ・イリノイ大ICUでの学びから,「アメリカが看護実践を高めた要因に,高度看護教育の普及などがあった」と解説。「看護スタッフ参加型体制,学際的コラボレーション,看護管理・サポートシステムが,実践・教育・研究の連携には重要」と述べ,アメリカにおけるユニフィケーションの現況や今後の課題にも触れた。その上で,社会のニーズに応えるためには,「専門性を高める教育,実践の場には専門看護師,看護管理・サポート体制が必要」と指摘した。

看護職育成に必要な教育と臨床の場とのリンケージ

 鼎談「看護専門職を育てる効果的システム」には,田中由紀子氏(横浜市立市民病院看護部長),竹股喜代子氏(亀田総合病院看護部長),高嶋妙子氏(日本看護協会看護師職能理事)の3氏が登壇。
 横浜市立市民病院は,精神看護専門看護師をいち早く登用し,認定看護師の育成にも取り組むなど看護水準の向上を図っている。田中氏は,「病院に働く者すべてが専門職であり,責任が取れる人材。自律した看護職が専門性を発揮することでチーム医療も成り立つ。先駆的に専門看護師を登用してきたが,現在専門看護師2名,認定看護師4名が従事している。育成支援には時間と金がかかるが,管理職が個を育てるシステムを保持することで,有能な看護職を育てる風土ができあがった」と述べた。
 亀田総合病院は,院内教育システムにアメリカのインストラクターを招聘するなど,ユニークな方針で電子カルテの導入やISO9001の認証などを行なってきている。竹股氏は「地域の中にあって,医療の質の向上をめざし,看護中心に考えてきた病院。看護教育も自らの手で行ない,独自の認定看護師を育成するなど,知らず知らずの間に病院としての風土ができあがった」と述べ,「看護職の育成には,教育と臨床現場のリンケージは必須」とした。
 高嶋氏は,「専門看護師の導入は,必要性から発生するものであり,診療報酬を視野に入れた導入は本末転倒になろう。必要な人が組織に入るというシステムが重要で,臨床で活かされる専門看護師でなければならない」と述べた。