医学界新聞

 

第3回日本言語聴覚士協会総会・学術集会開催


 第3回日本言語聴覚士協会総会・学術集会が,藤田郁代会長(日本言語聴覚士協会長/国際医療福祉大)のもと,5月18-19日の両日,郡山市のビッグパレットふくしまで開催された。
 本学術集会では,齊藤智氏(京大教育学)による特別講演「言語のワーキングメモリー」が行なわれた他,シンポジウム「変性疾患の言語臨床」,パネルディスカッション「重度難聴児のハビリテーション」,さらに企画セッション「AACの可能性-シングルスイッチがひらく世界」が,またセミナー「摂食・嚥下障害」「臨床研究の技法」「言語発達障害の臨床」が企画された。
 総会では,学会設立や地域組織強化への議論が進み,協会の充実が検討された。


言語聴覚療法の新設

 本年4月の社会保険診療報酬改定において「言語聴覚療法」が新設されたこと受け,古元重和氏(厚生労働省)による特別セッション「言語聴覚療法と診療報酬」が行なわれた。氏は,史上初の「マイナス改定」の中,新たに「言語聴覚療法」が設置され,特に個別療法,集団療法として評価すること,早期リハの評価の充実,計画および評価にかかる評価の充実など,リハに関する評価の体系的な見直しがなされ,質の評価に重きを置いたと強調。さらに「言語聴覚療法」に関しては,従来の言語療法から改編され,施設基準の設定や,理学療法・作業療法と同様の点数設定となったことなどを解説した。

変性疾患への言語臨床の構築

 シンポジウム「変性疾患の言語臨床」(司会=寺下病院 板倉登志子氏,兵庫県立姫路循環器センター高月容子氏)では,変性疾患に対する言語聴覚療法の体系化が必須との視点から,4人の演者が登壇した。
 最初に医師の立場から,池田学氏(愛媛大)が,「変性疾患総論-言語障害をきたす変性疾患」と題して,semantic dementia,progressive aphasia,アルツハイマー病など各疾患別に,ビデオを用いて病態や言語症状の特徴を解析。氏は,早期からの治療介入が変性疾患の大きな治療の鍵となるが,言語症状は重要な診断マーカーとなりうる点を強調した。
 続いて「進行性失語症例の言語症状の経時的変化-言語症状としての変化とSTとの関わり」と題して浮田弘美氏(阪大病院)は,ある進行性失語症の患者(初診時56歳男性)の治療経過を,初診時(失語症状出現後5年目)から,言語治療が継続困難と判断され終了するまでの事例を,経時的に解説。その経験から,進行性疾患における言語聴覚士の役割を模索した。

アルツハイマー病への対応

 また,「アルツハイマー病の言語障害-WAB失語症検査日本語版(以下,WAB)による検討」と題して,高月容子氏が,1993-2001年に同センターでアルツハイマー病と診断された451名を対象にWABを施行した結果を報告。その結果から,本疾患の患者の言語機能はごく初期から障害され,言語障害の評価が病気の早期診断に有効であり,また,重症度によって言語機能が変化することで,各病期における患者への対応方法の検討が必要とするなど,今後の方向性を示唆した。
 山本智子氏(狭山神経内科病院)は,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性に対する,拡大・代替コミュニケーション(AAC)を用いたコミュニケーション支援について言及。AAC使用には重症度だけでなく,患者の心理状態の把握が重要であるが,モチベーション・システム・セオリー(成果=意欲×技能/障害による制限×応答的な環境)を導入して効果を上げた経緯を紹介した。