医学界新聞

 

がん患者のサポートグループの現状と課題

第15回日本サイコオンコロジー学会開催


 第15回日本サイコオンコロジー学会が,さる5月30-31日の両日,吉田茂昭会長(国立がんセンター東病院)のもと,東京・築地の国立がんセンターがん研究振興財団「国際研究交流会館」などで開催された。

がんにかかわる話題を論議

 今学会では,柳原和子氏(ノンフィクション作家)による教育講演「がん患者学のこころみ」をはじめ,同「Narrative Based Medicine(NBM)とEvidence Based Medicine(EBM)-医療を考え直す新しい視点」(富山医薬大 斎藤清二氏)や,「サイコオンコロジーは何をめざしているのか」を追究すべく企画されたシンポジウム「サイコオンコロジー研究の基礎と応用」(座長=広島大 山脇成人氏,国立がんセンター研支所 内富庸介氏)が行なわれた。また,ワークショップは(1)「がん患者のサポートグループ:現状と課題」(座長=北里大 宮岡等氏,東海大 江口研二氏),(2)「先端医療とサイコオンコロジーのかかわり:造血幹細胞移植」(都立駒込病院 赤穂理絵氏,国立がんセンター研支所 明智龍男氏)の2題,他に「Spiritual Painに関する事例検討」(座長=福岡大 西村良二氏,国立がんセンター東病院 志真泰夫氏,基調講演=東海大 村田久行氏,症例提示=目白大小池眞規子氏)が企画された。
 本号では,これらの中からワークショップ(1)の内容を報告する。

がん患者・家族を支える

 ワークショップ(1)には,竹中文良氏(ジャパンウェルネス理事長),季羽倭文子氏(ホスピスケア研究会代表),堀泰祐氏(京都警察病院),保坂隆氏(東海大)が登壇(右写真)。
 竹中氏は,2001年5月に発足した,がん患者・家族へのサポートシステムである「ジャパンウェルネス」の活動内容を紹介。現在会員467名のジャパンウェルネスは,小人数グループでの話し合いや,自立訓練・自己催眠などのストレスコントロール,セカンドオピニオン相談などを中心に,患者・家族が前向きに生きるプログラムを実践している。氏は,特にセカンドオピニオンに関して,その相談内容は,「治療の選択(48%),どこまで闘うのか(14%),医師への不信(12%)であった」と述べた。
 また季羽氏は,(1)がんについて学ぶ,(2)毎日の健康状態に対処する方法を学ぶ,(3)自分の気持を見つめ心身の活気を保つ,(4)援助システムと活用できる資源を知るの4つのプログラムからなる「がんを知って歩む会」の活動を報告。今後の同会の課題として,「参加申込者はすでに前向きで積極的な姿勢があるが,そうなれない人との接点をいかに持つか。病院などでの正規の看護活動として位置づけること」をあげた。
 堀氏は,「術前・術後を問わず,乳がん患者の身体的,精神的,社会的な生活の質の向上のため,必要な情報の提供,助言または支援活動を行なう」を目的として2000年12月に発足したNPO法人乳がん患者支援活動「Re-vid(リ・ヴィッド)」の試みを紹介。楽しくて気持のよい「フィットネス」や,暗くならない「セミナー」,1人で悩まずに患者同士で自己回復力を高める「グループ療法」などを通した患者支援であり,これまでの「患者会」とは違った支援組織であることを強調した。
 保坂氏は,乳がん患者3-10名に,精神科医・看護師各1名で,週1回1時間(もしくは90分)を5回のセッションで行なう,「構造化された精神科的介入」プログラムを考案。76名の乳がん術後患者に介入療法を行なったところ,58名が5週連続の治療に参加。「いずれもQOLの改善がみられた。追加連続介入で,進行・再発例のQOL改善が可能」と報告し,今後の展望として,「介入方法の普遍化」などをあげた。
 総合討論の場では,それぞれのサポートグループの運営コスト,また患者への支援活動が,将来の「がん医療」として認められるか,などが話題となった。