医学界新聞

 

「脊髄損傷患者の看護」をテーマに

第2回日本整形外科看護研究会開催


 第2回日本整形外科看護研究会が,さる6月1-2日の両日,武田宜子会長(横市大看護短大)のもと,横浜市のはまぎんホール「ヴィアマーレ」でで開催された。
 「脊髄損傷患者の看護」をテーマとした今研究会の初日には,総会に引き続き,基調講演「脊髄損傷者のセルフケア」(武田氏)の他,一般演題4題の発表が行なわれた。また,イブニングセッションとして講演「脊髄損傷患者の早期リハビリテーションとシーティング」(アクセスインターナショナル 山崎泰広氏)も企画された。
 2日目は,「整形外科看護フォーラム」と位置づけ,「脊髄損傷者の急性期治療」(総合せき損センター 植田尊善氏),「脊髄損傷者の急性期看護」(総合せき損センター 宮路操代氏),「脊髄損傷者の泌尿・生殖機能障害の治療」(国立身体障害者リハビリテーションセンター 牛山武久氏),「脊髄損傷者の泌尿・生殖機能障害の看護」(国立身体障害者リハビリテーションセンター 道木恭子氏)の4講演が行なわれた。


受傷前の生活に戻ることが普通に

 脊髄損傷の発生は,100万人に40人の割合で発生し,男女比で4:1,受傷原因は,転落・転倒が約6割と圧倒的に多く,ついで交通事故が3割近くを占めている。
 武田会長は基調講演で,脊髄損傷者は機能・能力障害に加え,社会的不利があり,そこには偏見と保護政策の不備があると強調。また,脊髄損傷者と看護師間の依頼・委ねるという行為は,「オレムのセルフケア不足理論にみる健康逸脱時のセルフケア要件と援助方法に類似している」と指摘した。
 また,イブニングセッションで講演した山崎氏は,米国留学中に受傷。現在も車いすの生活だが,「米国でのリハ生活は楽しかった」と述べ,早期リハ,患者同士によるピアカウセリング,豊富な情報量の重要性を指摘した。また,「健常者・障害者という概念はなく,移動手段が違うだけで,基本的には受傷前の生活に戻ることが米国では普通とされている」と述べ,車いすはそのために不可欠なものとした。また,「個人の機能を最大限に発揮できるよう,左右対象な姿勢保持をすべく,個々人にあったシーティングは重要な技術」と述べ,自らが考案した用具などを紹介し,シーティングの有効性を示した。

脊髄損傷者の生殖機能

 フォーラムで道木氏は,女性脊髄損傷者の出産30例を中心に報告。「産んでよかった」と語る脊髄損傷者だが,妊娠期の問題として併発症やADLの低下などの身体的な面や,障害を持ちながら育児はできるのかといった精神的な側面,また社会的な環境整備の不備などを指摘。そのうち,併発症に関しては,一般妊婦にはみられない,尿路感染症や褥瘡が発生しやすいことを特徴にあげるとともに,胎動や陣痛の自覚困難も指摘した。なお,この報告は本紙2422号(2001年1月29日付)でも触れている。
 一方牛山氏は,男性脊髄損傷者の勃起不全治療や射精障害の治療を解説。バイアグラ,陰茎海綿体自己注射の有効性や,電気刺激による射精での妊娠例を紹介した。

次回は国際看護フォーラムを開催

 本研究会の総会では,会員増に伴う組織充実のために,組織の一部改正を承認。また,次回学術集会では国際看護フォーラムを併催し,国外から講師を招聘することや,明年6月28-29日に今回同様はまぎんホールで開催することが決定した。
 なお,同研究会では年間10件程度の研究支援を行なっているが,本年度の応募締切は9月14日。詳しくは下記まで。
◆学会事務局:横浜立大学看護短期大学部
 TEL&FAX(045)787-2562