医学界新聞

 

食べたい気持ちを支える看護

国際リハビリテーション看護研究会第7回公開研修会開催

【報告者】宮内康子(神奈川県総合リハビリテーション事業団厚木看護専門学校)


専門職としての意識向上をめざして

 国際リハビリテーション看護研究会(代表=茨城県立医療大 野々村典子氏)の主催による,第7回公開研修会が,さる5月25日,「食べたい気持ちを支える看護」をメインテーマに,東京・荒川区の東京都立保健科学大学で開催された。
 今研修会では,金城利雄氏(広島県立保健福祉大教授・看護学科)を講師に,「嚥下障害のリハビリテーション(以下,リハ)看護」の講演,および嚥下障害に関する演習が行なわれた。また,参加者は,南は沖縄,北は青森までの看護教育・研究者,急性期リハ病院や在宅でのリハ看護実践者など100余名。さまざまな領域からの参加者が一堂に会し,嚥下障害についての知識と技術を磨く機会となった。
 なお,本研究会は,リハ看護の専門性向上をめざして,諸外国および日本のリハ看護の現状と課題をテーマに,海外からの演者を招聘するなど,これまで6回の公開研修会を開催してきた。これらの研修会をとおして,リハ看護に携わる実践者と教育・研究者の交流が着実に育まれ,専門職としての確実な意識向上の高まりが感じられる,熱気あふれる会となっている。

摂食・嚥下障害者への看護者の役割

 今研修会の午前中には,研究会総会に引き続き,金城氏による講演が行なわれた。 氏は,嚥下障害に関して,(1)嚥下が外部からは見えにくい体内運動であること,(2)訓練や管理に際し誤嚥など,重篤な医学的危険を伴なう,(3)重篤な多くの障害を併せ持つ症例が多い,などの対応の難しさがあるとした。その上で,摂食・嚥下障害がある人への看護者の役割として,患者と向き合いながら,「誤嚥の予防に最大留意し,栄養の維持と食べる楽しみを図ること」と指摘。そのためには,「患者の食べる楽しみを理解した上で,嚥下障害に対する適切なアセスメント能力や適切な援助技術を持つことが大切」と述べた。
 さらに氏は,正常な嚥下運動のメカニズムや嚥下障害の病態からそのスクリーニング法を解説するとともに,具体的な訓練法まで紹介した。講演からは,患者を支えていくためには,看護師はその思いだけでなく,確かな裏づけとなる嚥下障害に関するアセスメント能力や援助技術が必要なのだという,金城氏の熱い思いが伝わってきた。

嚥下のメカニズムを実体験

 午後からは,午前の講演に基づく演習が行なわれた。参加者全員が2名1組となり,交互にナース役,患者役を務め,水,お茶,プリンなどを使用し,どのようなものが嚥下しにくいのかなどを実体験。参加者は,目をつぶったままで口に入れられたものを嚥下する不安感や,嚥下を容易にするために用いられるトロミ剤を使用した場合の,食物の味の変化も体験した。
 その他,簡単にできるアイスマッサージ法などを学ぶなど,それぞれに今までの「食」の援助を振り返りながら,時に笑い声が上がる楽しい雰囲気の中で,熱心に演習に取り組んでいた。
 その後に行なわれた意見交換では,参加者各施設の実践例が紹介されるなど,看護師が手探りで嚥下訓練に取り組み,文献片手に「食べたい気持ちを支える看護」にトライしている姿が彷佛された。また,段階的な嚥下訓練はチームアプローチなくしてできないと言われていたが,リハ専門スタッフがいない病院では,医師,看護師だけであっても患者のQOLを考え,連携して嚥下訓練に取り組む中で成果をあげている例も紹介された。
 また,今研修会のアンケートからは,「午前中の講義に則った午後の演習で,喉の動きなどを実体験でき,嚥下のメカニズムがよくわかった」「実際に演習でき,経口から食べることの大切さが実感できた」「他施設との情報交換ができてよかった」「自分たちの実践が間違っていなかったことが確認できた」など,研修会における演習を肯定的にとらえる意見が多かった。今後もこれらの意見を参考に,リハ看護の専門性の確立について考える研修会を続けていきたい。

リハ看護継続教育プログラムを実施

 なお同研究会では,リハ看護に関心の高い方々から要望されていた継続教育プログラムを,本研究会独自に実施する準備が整った。このプログラムの目的は,リハ看護に携わる看護職が,リハの理念に基づいた看護実践を行なうために必要な専門的知識と技術を学ぶことにあり,リハ看護の実践を支える看護職のアイデンティティを高めるための一助となればと考えている(開催案内参照)。
 また,プログラムの一部を第8回公開研修会「リハビリテーション医療の今日的課題」(講師=茨城県立医療大学附属病院長大田仁史氏)として,きたる7月27日に東京都立保健科学大学で開催する。興味のある方はぜひ参加いただきたい。

●リハ専門看護-継続教育プログラム開催案内

 国際リハ看護研究会では,会員を対象に下記のとおり「リハ専門看護-継続教育プログラム」を3日間連続で3回実施する。なお,原則として参加資格は,リハ領域での看護経験3年以上の者。
◆コース1:7月25-27日
・リハの概念と看護の役割
・リハ看護における評価のあり方
・リハ看護に関連するフィジカルアセスメント(演習)
◆コース2:9月19-21日
・リハ過程における看護診断Part(1)
・リハ過程における看護診断Part(2)
・リハ看護の役割遂行に必要な専門技術Part(1)
◆コース3:11月21-23日
・多様な局面におけるリハ看護
・リハ看護の役割遂行に必要な専門技術Part(2)
・リハ看護と法律,経済,倫理
◆募集人員:各回20名程度
◆参加費用:各コース3日間15,000円
◆開催場所:東京都立保健科学大学
◆時間:10:00-12:30,13:30-16:00
◆申込方法:事前申込み制。詳しくは下記事務局宛へFAXまたはE-mailで
*プログラムは変更する場合があります。
◆連絡先:〒300-0394 茨城県稲敷郡阿見町阿見4669-2 茨城県立医療大学 (野々村研究室)内 国際リハビリテーション看護研究会事務局 FAX(0298)40-2295
 E-mail:nonomura@ipu.ac.jp