第102回日本外科学会が開催される
激動の時代に「創造と調和」をテーマに
さる4月11-13日,第102回日本外科学会が,今村正之会長(京大教授)のもと,京都の国立京都国際会館,他で開催された。
今学会のテーマは「創造と調和」。「外科と基礎医学」,「外科医を取り巻く諸問題」についての演題に「本庄一夫記念・肝膵シンポジウム」を加えた6つの特別企画が組まれた他,会長講演,井村裕夫氏(総合科学技術会議)や海外招待者による9題の特別講演,3題の国際シンポジウムなど,多彩なプログラムが企画された。
本紙ではこの中から,本年度より始まる新しい外科専門医制度を軸に,今後の外科医養成のあり方が話題となった特別企画「外科教育と専門医制度」での議論を紹介する。

新時代の外科医をいかに育てるか
本年度から始まる新しい外科専門医制度,2004年より実施される卒後臨床研修の必修化,卒前教育におけるコア・カリキュラムの導入と全国共用試験の実施など,外科医の育成を取り巻く環境は,今日大きな変貌を遂げつつある。特別企画「外科教育と専門医制度」(司会=東北大 大井龍司氏,京大 田中紘一氏)では,まず大井氏が「日本の専門医制度は欧米のそれと比べて著しく劣るのが現状だ。旧態以前の枠から抜け出し,国民のためにも,それぞれの医師のためにも新しく,しっかりした制度を構築する必要がある」と挨拶。新時代の外科医養成のあり方について5人の演者による討議が行なわれた。医学生・研修医に外科医への夢を

新しい外科専門医制度
続いて登壇した松田暉氏(阪大)は専門医制度実行委員長の立場から新しい専門医制度の概要を説明。それによれば,新制度は「学会認定から第3者認定にする」,「サブスペシャルティの基礎部分を包括し,かつ救命・救急医学を必須とし,施設格差をできるだけ是正したカリキュラムを構築する」,「経験症例および経験技術などの到達目標を明確にする」,「初期研修を含め,4-5年の修練期間とする」,「消化器外科,小児外科,心臓血管外科,呼吸器外科のサブスペシャルティ専門医制度(2階部分)との連携をとる」などの特徴がある。松田氏は実施にあたっての問題点を指摘しつつ,「修練側も指導側も新たな発想で,時代に合った社会に納得してもらえる専門医制度を構築していく気構えが必要だ」と述べた。
必修となる救命・救急医学の修練
一方,小林国男氏(帝京大)は,救急・外傷外科の立場から口演。新しい外科専門医カリキュラムの中では,日本救急医学会の認定施設を修練施設に加え,外科的内容に重点を置いた救命・救急医学を4か月修練することが必須となったが,その実施に伴う問題点や改善点などについて議論を展開した。救命・救急医学修練の到達目標としては「外傷,熱傷,ショックなどの理解」,「外傷の診断と手術適応決定,各種外科的救急処置の修得」,「多発外傷を含む重症外傷の手術経験10例」があげられているが,「外傷・熱傷の初期治療は,できる施設が限られており,4か月で十分な症例を経験することは困難である」と指摘した上で,日本外傷学会が中心となって開発している,急性期外傷診療の初期診療手順や最低限必要な処置を研修する「ATEC(Advanced Trauma Evaluation & Care;外傷診療研修)コース」などの活用を提言した。また,「外傷治療は外科学の大きな柱であり,将来はサブスペシャルティ専門医制度に外傷外科を加えるべきだ」との考えを示した。
研修環境の改善が不可欠
出月康夫(南千住病院)は(1)患者-医師関係の変化,(2)医療制度改革,(3)病院経営の悪化,(4)卒後臨床研修必修化,などの医療環境の変化を示しつつ,「今,どのような外科専門教育と専門医制度を作るかによって,外科医療の将来は大きく左右されることになる」と指摘した。特に,氏は「現在の外科研修が劣悪な環境で行なわれている」ことを強調,「トレーニング中の医師の生活権を保証できない病院は,研修病院として認定すべきではない」と訴えた。さらに,専門医制度の再構築と同時に,それに対応した診療報酬制度の導入,特に技術と経験の評価と尊重が重要であると主張した。