医学界新聞

 

「目覚めよ!看護の記録技術」をテーマに

「日本看護・社会・政策学会」2002年次大会開催


 2001年3月17日に,「看護と社会の関係において,看護の研究と実践を政策に反映させることにより,国民の福祉に貢献し,看護の質を向上させる」ことを目的に設立された,日本看護・社会・政策学会の2002年次大会が,さる3月16日に,鷹井清吉大会長(看護アセスメント協会代表)のもと,大阪市のクレオ大阪西ホールで開催された。
 今大会では,「診療記録などカルテの情報開示時代を迎え,一方では医療訴訟が頻繁に起こっている。このような状況下で看護記録をリスクマネジメントの視点から見直そうとの動きもある。しかし,本来看護記録は何のために存在し,どのような目的や意義を持っていたのか。看護の記録技術の形態や方向性を探る」ことを目的に,「目覚めよ!看護の記録技術」をテーマに掲げた。


 なお,今大会では,大会長講演「変化する看護記録のはがゆさ」(鷹井氏)をはじめ,教育講演 I「責任証明のための看護記録形態を問う」(阪大 江川隆子氏),同 II「医療訴訟での看護記録の存在」(堂前弁護士事務所・看護師 堂前美佐子氏),同 III「電子カルテにおける看護記録」(NECソリューション 木村義氏,代読=鷹井氏,日赤看護大 中木高夫氏),およびプレゼンテーション「看護記録の改善」に引き続き討論「これでいいのか看護記録!」(司会=自治医大 成田伸氏)が行なわれた。

日本における看護記録の歴史を紹介

 大会長講演を行なった鷹井氏は,「日本の看護の夜明けは明治維新とともに始まり,日露戦争から第2次世界大戦の終結までに社会に揺れ動かされながら現在に至った」として,明治期の大関和の著『実地看護法』には「体温・脈拍・呼吸・薬用」などの患者個々の記録が「日誌」ではあるものの,「看護記録がすでにあった」と評価。
 また,近年の看護計画・記録に関しては,『看護計画』(吉武香代子),『看護記録の実際』(幡井ぎん,両著とも絶版,医学書院)などの書籍を紹介し,後の「POS」,さらに「看護診断」につながる経過を解説した。

看護記録の改善はどこまでかを論議

 また,教育講演 II では,堂前氏が実際の医療訴訟例を提示。「患者の安全を守るための看護記録だが,普通に観察したことを普通に書いていれば法的な責任は問われない。普通に書かないから罪に問われる。それは,看護職が普通に観察をしていないことでもある」と辛口な発言を行なった。
 さらに,島末喜美子氏(市立池田病院),松島真弓氏・糸井智美氏(社保京都病院),乗松千鶴氏(国立大阪病院)は,それぞれの病院における看護記録の改善に関する報告を行ない,討論にその話題は引き継がれた。
 討論には,中木氏,笹岡和子氏(国立循環器病センター),福田直子氏(産業医大病院),小島三紀氏(羽島市民病院)が登壇。標準化や開示を前提とした記録,看護診断と看護記録などが議論された(写真)。
 次回は,明年3月8-9日の2日間の日程で,広瀬チワ子大会長(羽島市民病院副院長)のもと,岐阜県立看護大で開催される。