医学界新聞

 

HIV/AIDS看護研究会開催


 さる2月2-3日の両日,第7回HIV/AIDS看護研究会(JANAC)が,折津礼子代表(横市大病院)のもと,東京・飯田橋の東京都ナースプラザにおいて開催された。今回は,初参加者のための無料公開講座が準備された他,基礎講座「これだけは知っておきたいHIV/AIDSの最新情報」(折津氏,JANAC 有馬美奈氏),症例検討(座長=都立豊島病院 関矢早苗氏),「看護の視点で取り組むHIV/STDの予防-ケアにおけるフォーカス」をテーマにした演題発表(座長=JANAC 堀成美氏)に加え,パネルディスカッション「看護と多職種・他科との連携の課題」(座長=国立清水東病院 清水恵氏)などが行なわれた。

HIV感染者,過去最悪の614人増

 同会開催直前の1月31日,厚生労働省のエイズ動向委員会は,「感染症法に基づくエイズ患者・感染者情報」を公表した。これによれば,2001年のHIV感染者の報告数は614人で,保健所におけるHIV抗体検査件数は減少しているにもかかわらず,前年を152名上回る過去最悪を記録。
 これを受けて有馬氏は,基礎講座の中で, 「看護にできること」として,「最新情報と患者の状態を理解し,アセスメントするとともに,患者の意思決定を支えること」と述べた。特に慢性期における,服薬継続のための支援,日和見感染症などの副作用のモニタリングなどを重視。また,米国の「針刺し後のHIV感染事故防止のための予防内服マニュアル」を提示するとともに,「まずリキャップをやめることから」と針刺し感染事故防止の心得を訴えた。
 堀氏は,「根治的治療のない感染症HIV/AIDSでは,予防ほど大切なものはない」と述べ,「現在出ているのは2-3年前の結果。今後,20-30歳代の若者に感染者が急増する恐れもある」と指摘。臨床で取組む予防に,(1)性感染リスクの軽減〔性感染症(STD)患者や妊娠中絶希望者などに予防教育を提供〕,(2)早期診断(日和見感染症状,STDなどからのアプローチ),(3)効果的治療(ウイルス量をより減少させる治療,母子感染予防),(4)医療従事者の感染の予防と対策をあげた。医療者側の課題としては,safer sexやSTD予防,避妊など,通常話しにくい事項を適切に伝達する具体的なスキルと,最新の正しい情報を常に得ることをあげた。また,エイズ予防財団による「母子感染対応マニュアル」から,HIV感染者の新生児に対するイソジン点眼やピューラックスによる沐浴などの項目が削除されたことを報告。「医療従事者による過剰反応は差別を促す」として,正しい情報の認識と適切な対応を呼びかけた。
 パネルディスカッション(写真)では,HIV担当看護婦の立場から大野稔子氏(北大病院)が「看護と他職種-他科との連携の課題」を発表。北大のHIV担当看護婦の役割と現状を紹介。今後の課題として,外来看護婦・院内他職種との連携,北海道HIV/AIDS看護ネットワーク設立などをあげた。続いて看護管理者の立場から,千葉史子氏(都立駒込病院)が,駒込病院感染症科における継続看護体制を説明。最後に,他科ナースの立場から松原千秋氏(国立病院九州医療センター)が,ICUにHIV感染者を受け入れた事例を通し,感染症対策専任看護師との連携の困難と,HIVの知識の乏しい他科ナースのとまどいを報告。「多忙な現場における実際的な問題として,どう専門ナースとのコミュニケーションをはかればよいのか」と疑問を呈した。
 この他,8演題が発表され,井上洋士氏(東大)は,「HIV感染者の社会関係に関する研究-性行動をも含めて」を講演。調査対象となったHIV感染者の91.8%が差別不安由来の生活自主規制を行なっていること,59%が性生活に不満足感を抱いていることなどを明らかにした。また,HIV感染者の情緒的サポート提供者には,父母やパートナー,友人とともに,病院の医師・看護職が多くあげられたと報告。一方,ネガティブサポートを受けた相手にも医師・看護職が最も多くあげられており,「どのようなサポートがネガティブに捉えられてしまうのか,今後の検討が必要」と述べた。