医学界新聞

 

「新世紀の夢-優しい医療」をテーマに

第39回日本病院管理学会が開催される


 第39回日本病院管理学会が,さる10月31日-11月1日の両日,鈴木荘太郎会長(東邦大)のもと,東京・大田区の大田区民ホール「アプリコ」で開催された。
 今学会では,21世紀最初の学術集会に当たることから,「今世紀には医療を受ける側にどのような医療の提供が可能かを問う学会としたい」(鈴木会長)として,「新世紀の夢-優しい医療」をメインテーマに据えた。このテーマのもと,一般市民の参加を呼びかけた公開講座「新世紀を語る」(司会=鈴木会長,日本経済新聞社 渡辺俊介氏),および公開シンポジウム「がんの早期発見と患者のQOL」(司会=産業医大 舟谷文男氏,鶴ヶ峰病院 田中卓雄氏)が行なわれた他,特別講演「新人口推計から見た超高齢化社会像と医療福祉問題」(日大人口問題研究所 小川直弘氏),学術シンポジウム I「クリニカルパスの評価」(司会=横市大病院 橋本廸生氏,NTT東日本関東病院 小西敏郎氏),同 II「医療情報システムと医療経営」(司会=東医大 名和肇氏,名城大 酒井順哉氏)などが企画された。なお一般演題は,「介護保険と病院医療」や「看護システム」「看護の質」など課題発表6課題44演題およびポスター96演題が行なわれた。

価値観を踏まえた高齢者対策の必要性を示唆

 特別講演を行なった小川氏は,古稀を迎える高齢者はかつては全人口の1/4であったのが,現在は3/4までに増えており,「古稀」の名称が相応しくなくなったことや,日本だけの特徴である「ベビーブーマー(1947-1949年生まれの人)」によって,現在90歳以上の自動車免許取得者は2.4万人だが,2020年には120万人となると指摘。また,「給料から,配偶者手当,家族手当,通勤手当などがなくなる時代になる」と予測し,「価値観を踏まえた高齢者対策」の必要性を説いた。

医療制度改革試案をめぐって

 公開講座では,津島雄二氏(衆議院議員,前厚生大臣)が「21世紀の医療」と題し基調講演を行なった。氏は,厚生労働省が本年9月に提示した「医療制度改革試案-少子高齢社会に対応した医療制度の構築」を軸に,その概要を伝えるとともに,私見としながらも「試案は政府の文書としては問題をはらんでいる」と問題点を指摘。
 試案は,日本の医療がめざすべき将来像として(1)患者の選択の尊重と情報提供,(2)質の高い効率的な医療提供体制,(3)国民の安心のための基盤づくりを掲げ,当面進めるべき施策としては,EBM(根拠に基づく医療)や医療のIT化(電子カルテ)の推進,広告規制の緩和,小児救急医療等の充実・確保などを課題にあげている。
 これらを踏まえ津島氏は,「財政の基盤づくりが重要であり,保険料算定の見なおしなどが必要。コスト・ベネフィットの認識を持つとともに,医療現場や専門職団体が声をあげていかなければ,改革にはならない」と述べ,試案が国会を通過することは難しいことを示唆した。
 その後,看護職の立場から井部俊子氏(聖路加国際病院)が登壇。「診断・治療技術の進歩が複雑性を増す一方,夜間も日中と同様の治療が継続され,業務密度が高くなっている。また,入院期間短縮による患者の入れ替割が激しくなっている」などの医療現場の変化を提示した。その上で,「看護職は医療事故の当事者になることが多い」と述べ,聖路加国際病院における与薬エラー発生要因を報告するなど,リスクマネジメントを中心に発言。まとめに当たり氏は,「21世紀には,『忙しそう』と同情されるナース像が強調されるのではなく,婦長から『優秀なナースが多くて困ります』という苦情を聞きたい」との希望を述べた。
 また,医師の視点からは木村佑介氏(木村病院,東京都医師会理事)が,医療を受ける側からは司会の渡辺氏が,それぞれの立場から発言。その後の討論では,患者の意識改革の必要性や,医療情報の共有化,医療の標準化などが話題となった(写真)。
 次回は,明年11月1-2日の両日,舟谷文男会長のもと,北九州市の北九州市国際会議場で開催される。