医学界新聞

 

「21世紀に躍動する救急看護」をテーマに

第3回日本救急看護学会が開催される


 第3回日本救急看護学会が,さる10月19-20日の両日,中村恵子会長(青森県立保健大)のもと,「21世紀に躍動する救急看護-救急看護の連携・協働の成果に向けて」をメインテーマに,青森市の青森市文化会館で開催された。
 今学会では,会長講演「救急看護の連携・協働のストラテジー」をはじめ,招聘講演「高齢者の救急ケア事情と展望-米国の現場から日本をのぞみながら」(ビバリー・エンタプライズ国際開発部門 Kazuyo K.Sooudi氏),教育講演 I「SIRSの新しい知識」(岩手医大 遠藤重厚氏),同 II「地域救急医療と救急ヘリコプター」(弘前大滝口雅博氏),同 III「移植コーディネーターの役割とナースとの連携」(日本臓器移植ネットワーク 河野優子氏),同 IV「救急医療とヒューマンエラー」(常磐大大学院人間科学研究所 上見幸司氏)の他,パネルディスカッション「プレホスピタルケアの連携」,シンポジウム「救急看護の連携・協働の成果を探る」,および2日目のほぼ1日をかけて行なわれたワークショップ「ACLSの理論と実際」(講師=日本ACLS研究会/山梨医大 田中行夫氏)が企画された。
 また,交流集会は(1)「初期・2次救急看護婦の卒後教育」,(2)「救急初療室の看護記録」,(3)「災害救急時のシミュレーション」,(4)「吸引と感染予防」の4題が,さらに今学会における初の企画として,日本救急医学会理事長(杏林大 島崎修次氏)と日本救急看護学会理事長(北海道医療大 高橋章子氏)による対論「救急ナースの教育と救急医の教育-基礎教育から臨床教育まで」(司会=中村会長)が行なわれた。なお一般演題は,口演75題,ポスター29題の計104題が発表された。


プレホスピタルケアにおける連携

 小倉ひとみ氏(川崎医大病院高度救命救急センター)と寺師榮氏(大阪府立千里救命救急センター)の司会で行なわれたパネルディスカッションには,中谷茂子氏(大阪府三島救命救急センター)が看護の立場から,志賀寧氏(宮城県塩釜地区消防本部)が救急救命士の立場から,田中秀治氏(国士舘大)が救急救命士教育の立場から登壇。
 中谷氏は,地域におけるCPR(心肺蘇生法)普及啓発活動における救急ナースの役割を述べるとともに,プレホスピタルケア充実に向けて,蘇生率,救命率,社会復帰率の向上をめざす「CPR啓発活動の充実と継続」と,「ナースによる病院前救護」をあげた。また田中氏は,昨年4月から開始され,現在は杏林大と国士舘大の2校のみが行なっている,4年制の「救急救命士教育」について解説した。

救急看護の連携・協働の成果を探る

 シンポジウムは,上田留美子氏(聖路加国際病院)と松月みどり氏(日大板橋病院)の司会のもと,五百蔵三奈氏(札幌医大病院),青木正志氏(筑波メディカルセンター病院),縄島正之氏(東女医大病院),太田祥一氏(東医大)が登壇。
 五百蔵氏は,「重症集中ケア認定看護師」の立場から,救急領域における認定看護師の役割について述べた。また,「救急看護認定看護師」との関連について,「それぞれの役割を明確にし,連携・協働すればよいとの考えもあるが,現状では無理に明確化をする必要はなく,それぞれの専門・得意分野をきわめていくことが重要」との考えを示した。その上で,(1)認定看護師同士の連携をジェネラリストに先駆けて行なおう,(2)他職種に認定看護師の役割を知ってもらうように努力しよう,と提言した。

プレホスピタルケアにおける医療行為

 「対論」と銘打ち,日本救急看護学会と日本救急医学会の理事長が対談を行なうという今回の企画では,冒頭に司会の中村会長から,「両者で,忌憚のない意見交換を行なってほしい」との期待が述べられた。
 本対論では,両者から教育に関する現状と方針が示された後に,救急救命士と看護職が行なう医療行為について言及した討論が行なわれた。「原則的に看護職は医療行為ができないが,実状はしている。学会としても何らかの対策が必要」(高橋氏),「アメリカでは,ナースプラクティショナーを誕生させたことで医療トラブルが減少した。全部の看護職が医療行為を行なうのではなく,認定看護師,専門看護師がその役を担えるのはないか」(島崎氏)などの意見の他,「プレホスピタルケアにおける医療行為は看護職も可」との見解が,厚生省(当時)から示されていることも明らかにされ,学会として今後何らかの対策案や提言をしていく必要性も示唆された。
 また両者から,今後も連携が必要とした上で,「救急という学問に対し,医学,看護の両面からアプローチを行なう。互いに密に連携を取り合い,切磋琢磨し,日本の救急の学問をさらに発展させていく」との結論が示された。