医学界新聞

 

医師国試での臨床実技試験を想定

標準化OSCE全国トライアル開催


 さる10月27日,東京の慈恵医大高木会館にて,医師国家試験での実施を想定した,初の「標準化OSCE全国トライアル」が開催された。OSCE(客観的臨床能力試験)の医師国試での実施については,1999年に厚生省(当時)委員会が「卒前教育における活用・普及状況を踏まえて導入する」との方向性を決めている。今回のトライアルはそれを受け,全国の大学が参加する,厚生科学研究の補助による研究事業「OSCEの標準化に関する研究」(班長=日赤武蔵野短大教授 畑尾正彦氏)の一環として行なわれた。

医師国試のOSCEとは?

 この数年でOSCEは,卒前教育の中に急速に普及しつつある。しかし,それぞれの大学が別個に実施しているために,実施内容や評価方法・基準などについては,ばらつきがある。一方,医師国試でOSCEを実施するとなれば,内容や評価方法・基準について標準化しなければならない。
 畑尾氏は「各大学のOSCE実施責任者から『医師国試におけるOSCEとはどうあるべきか』をご意見・ご議論いただき,その結果に則って作成された試験を実際に行ない,実施できるかどうかを評価したい」と今回のトライアルの目的を話している。
 当日,実施されたOSCEは,4つのステーション(以下,ST)からなり,それぞれのSTがさらに3つのサブステーションに分かれるという構成で行なわれた。手技を評価するST(「心電図」,「縫合と抜糸」,「直腸診」)以外では,医療面接→身体診察→筆記試験(所見のまとめや検査・治療計画など)という流れで行なわれ,面接では患者(模擬患者)から得た情報をもとに,必要な診察を行ない,そこで得られた所見を踏まえ,検査・治療の計画を立てるという,診断・治療に至るプロセスを重視した総合的な試験となっていた(もちろん,態度や患者とのコミュニケーションも評価される)。
 受験者として参加した学生・研修医に試験を終わっての感想を聞くと,
 「大学病院での実習では各科ごとにどのような患者さんか予想できるが,初診外来を想定した今回のOSCEでは,自分ですべての情報を集め,判断しなければならないので大変だった」(5年生女子)
 「感冒や虫垂炎など,コモンディジーズが出題され,プライマリケアを意識した出題となっていた。しかし,実際には大学病院での実習で,学生がプライマリケア的な対応に出会うことは少ない。プライマリケアと縁遠いところで実習しているのに,(近年の医師国試の出題傾向も含めて)試験はプライマリケア重視というのは違和感がある。臨床実習の中身を変えていく必要があるのではないか」(6年生男子) などの意見が聞かれた。
 一方,各大学からはOSCE実施責任者だけでなく,多くの見学者が訪れ,今後の医師国試の動向に関わることだけに関心の高さを見せつけた。
 今後研究班では,今回の成果踏まえ,OSCEの実施方法の標準化についての報告をまとめる予定である。