医学界新聞

 

第7回白壁賞,第26回村上記念『胃と腸』賞贈呈式開催


 

 「第7回白壁賞」が八尾恒良氏(福岡大学筑紫病院・消化器科)・他「Phlebosclerotic Colitis: Value of Radiography in Diagnosis-Reports of Three Cases」(Radiology 214:188-192, 2000)に,「第26回村上記念『胃と腸』賞」が岩下明徳氏(福岡大学筑紫病院・病理)・他「胃カルチノイドの臨床病理学的検索-特にType I(A型胃炎に合併)とType III(sporadic)のリンパ節転移率について」(『胃と腸』35:1365-1380, 2000)に決定し,その贈呈式が渕上忠彦氏(松山赤十字病院・消化器科)の司会のもとで,さる9月19日,東京の一ツ橋ホールで開催された早期胃癌研究会において行なわれた。

「Phlebosclerotic Colitis: Value of Radiography in Diagnosis-Reports of Three Cases」

 「白壁賞」は,故白壁彦夫氏の偉業を讃えて設けられた賞で,氏の業績を鑑みて,消化管の形態診断学の進歩と普及に寄与する優れた研究を対象とし,「『胃と腸』誌に掲載された論文に限らず,「同誌編集委員が推薦する論文も対象とする」としている。今回は同誌35巻に掲載された全論文と応募のあった英文論文2編が選考対象となった。なお,八尾氏は「第17回村上記念『胃と腸』賞」を「X線・内視鏡所見からみたCrohn病の術後経過」で受賞している。
 贈呈式では,選考委員会を代表して西上隆之氏(兵庫医大・第2病理)が,「選考委員会で慎重に審査が行なわれ候補論文が絞られた後,全編集委員による厳正な投票によって受賞論文が決定した」と選考経過を報告。「本論文は,今まで世界に報告のない,大腸壁に静脈硬化が起こる病変を詳細に検討し,disease entityとして確立した貴重な論文である」と選評を述べた。
 続いて,同誌編集委員長の牛尾恭輔氏(九州がんセンター)が「Phlebosclerotic Colitisは,私自身10年くらい前はまったく診断できず,八尾先生が世界で初めて見つけられ,診断できるようになった。八尾先生に感謝したい」と祝辞を述べ,賞状と賞牌を授与。金原優医学書院社長から副賞の賞金が贈呈された。
 受賞者を代表して八尾氏は,「名誉なことであり,日本の形態学を世界に発信することに少しでもお役に立てればと願う。『白壁賞』の名に恥じぬためにも,今後も一層頑張りたい」と謝辞を述べた。

「胃カルチノイドの臨床病理学的検索」

 引き続き同会場で,「第26回村上記念『胃と腸』賞」の贈呈式が行なわれた。
 本賞は,『胃と腸』誌創刊時の「早期胃癌研究会」の代表であった故村上忠重氏を顕彰して設けられた賞で,消化器,特に消化管疾患の病態解明に寄与した同誌の年間最優秀論文に贈られる。岩下氏は「第12回同賞」の「villous tumorの病理診断-生検診断,癌化の問題を含む」に次いで,今回は2度目の受賞。
 贈呈式では,選考委員会を代表して西上氏が「白壁賞同様,選考委員会から推薦された候補論文の中から全編集委員の厳正な投票の結果選ばれた」と選考経過を説明。さらに「胃の典型的なカルチノイドの症例を,72もの多くを集め,きれいな肉眼写真や組織写真を網羅している。比較的予後がよいと思われていたA型胃炎に合併するType Iについて,Type IIIと同様に転移があり,それほど予後はよくないことを証明した論文である」と選評を述べた。続いて牛尾氏から賞状と賞牌,金原社長から賞金が贈呈された。
 受賞者を代表して岩下氏は,「名誉ある大賞をいただき大変光栄である。消化管カルチノイドには興味を抱いてきたので,今回の受賞は特別にうれしく思う。受賞論文を書き上げるに際し,人との協調性の大切さと,“その人の人間性は信じるが,行なった行為,すなわち論文は疑う”ことが大事だということを痛感した。拙論をご覧いただく際に,これら2点を読みとっていただければ幸いである。栄誉ある大賞を汚さぬように,今後も病理形態学に精進し微力ながら患者のために役立つよう努力していきたい」と謝辞を述べた。