医学界新聞

 

日本ヴァーチャル・リアリティ医学会設立に向けて

末舛 恵一(国立がんセンター名誉総長・済生会中央病院長)


 最近,「Nature」誌に欧米におけるヴァーチャル・リアリティ(VR)技術を用いたTelesurgeryの実験の論文が掲載されました。本技術は,まさにロボット技術とVR技術を融合させた遠隔手術システムであり,新しい医療機器産業の萌芽を予感させます。また,近年VR技術を用いた医学教育システムや手術訓練システム,内視鏡手術と組み合わせた低侵襲手術システムの研究が盛んになっています。一方,基礎医学分野でも,工学的擬似知覚技術を利用した知覚・認知研究が新手法として注目され,生理学や認知科学,精神・心理学への応用が進められています。さらに,ゲノム研究では,バーチャル細胞が構築されようとしています。
 このような世界的な先端医療技術の研究開発の情勢にいち早く対応し,さらに,日本発の国際的学術研究および医療機器産業を育成するために,このたび,日本VR医学会を設立することになりました。本学会は,VR技術の広く医学,医療,福祉,精神・心理,教育などの多くの分野への応用と,その社会的効果に関する研究を行なうことを目的としています。
 本学会は,今までの学会のような専門ごとに特化したものではなく,VR技術を中心に多くの学術分野を融合させる俯瞰的研究を推進する新しいタイプの学術会議にしたいと思います。
 このような意味からも,日本の学術研究の新しい方向として意義深い学術会議になることを期待しています。しかし,これには多くの方々の温かいご支援がぜひ必要です。
 本年11月30日,下記のように本学術会議の設立総会と,各界の代表的先生をお招きして第1回学術大会を行ないます。第1回会長には,本学会設立に遂力されました高橋隆先生(京都大学教授・医療情報部)に,「先端医学としてのVR医学の創生」をテーマとして開催していただくことになりました。
 本学術会議で,多くの方々が最先端のVR技術を用いた新しい研究テーマを発見され,多くの成果が生まれることを祈念する次第です。


●日本VR医学会設立総会・第1回学術大会
 11月30日/東京

◆メインテーマ:「先端医学としてのVR医学の創生」 
◆大会長:高橋隆会長(京大教授・医療情報部)
◆会場:国立がんセンターがん研究振興財団国際会議場
【プログラム】
◆内容:理事長挨拶(末舛恵一),大会長講演(高橋隆),記念講演「形成外科手術へのVR技術の応用と将来(仮題)」(慶大名誉教授 藤野豊美),「Medicine Meets Virtual Reality」(米国・イェール大 R. Satava氏)
◆学術講演:(1)遠隔ロボット手術へのVR技術(東大 光石 衛),(2)整形外科分野へのVR技術(阪大 菅野伸彦),(3)腹部外科手術(九大 橋爪 誠),(4)小切開心臓手術(慶大 川田志明),(5)バーチャルエンドスコピー(中京大 長谷川純一),(6)健康維持・増進へのVR技術の応用と将来(松下電工センター長 野村淳二)
◆連絡先:〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54 京都大学医学部附属病院医療情報部 日本VR医学会事務局
 TEL&FAX(075)751-3647
 E-mail:jsmvr@kuhp.kyoto-u.ac.jp