医学界新聞

 

第6回慶應医学賞受賞者決定


 

 このほど,第6回慶應医学賞の受賞者として,竹市雅俊氏(京大大学院教授/理化研発生・再生科学総合研究センター長,写真左),およびトニー・ハンター氏(米・ソーク生物学研教授/カリフォルニア大サンディエゴ校助教授,写真右)が決定した。慶應医学賞は,医学・生命科学の領域において顕著かつ創造的な業績をあげた研究者を顕彰することを目的に1996年から授賞を開始している。
 竹市氏の授賞研究テーマは,「カドヘリンの発見と細胞間接着機構の解明」で,細胞間接着機構がまったく不明であった時代に,2種類の細胞間接着機構(カルシウム依存性,カルシウム非依存性)を卓越した洞察力から見出し,その分子機構としてカルシウム依存性細胞間接着因子カドヘリン分子群の同定を世界に先駆けて行なった。
 さらに,カドヘリンには多種類のタイプが存在し,同じカドヘリンを持つ細胞同士が選択的に接着することを明らかにし,従来謎であった細胞の選択的接着機構に分子的基盤を与え,多細胞体制維持機構の解明に大きく貢献した。同氏によって切り開かれたカドヘリン分子群の研究は,細胞の増殖・分化,癌の発生と転移,自己免疫疾患,神経回路網形成など,多岐にわたる生命科学の研究領域に大きなインパクトを与えている。
 トニー・ハンター氏の授賞研究テーマは,「Srcチロシンキナーゼの発見と細胞増殖,癌化のメカニズムの解明」で,1980年にSrcチロシンキナーゼを発見し,タンパク質のチロシンリン酸化が,癌の発生に関与していることを世界ではじめて証明した。この発見は,多くの科学者の興味を引きつけ,それ以後多くのタンパク質チロシンリン酸化酵素,脱リン酸化酵素の発見につながった。
 さらに同氏は,タンパク質チロシンのリン酸化による修飾が,細胞内シグナル伝達,細胞の増殖に重要であることを明らかにし,細胞増殖における役割とその異常による癌化のメカニズムに重点を置いた研究を精力的に行なった。今回の選考では特に,細胞内情報伝達機構の研究の礎を築いた点が高く評価された。
 なお,同賞の授賞式はきたる11月29日に,同記念シンポジウムがきたる11月30日に,東京・新宿区の慶應義塾大学北里記念医学図書館北里講堂において開催される。詳細は下記まで問合せのこと。


記念シンポジウム 締切=11月16日
参加者募集中 11月30日/東京

◆記念シンポジウムプログラム:(1)Developmental Biological Molecular Medicine(竹市雅俊,東大 浅見誠,慶大 天谷雅行),(2)New Aspects of Tyrosine Kinase Research(トニー・ハンター,東大 吉田富,北大小田淳,慶大 松田達志)
※使用言語は英語
◆定員:200名(参加費無料)
◆申込締切:11月16日
◆連絡先:〒160-8582 新宿区信濃町35 慶應義塾医学振興基金事務室(細川・加藤)
TEL(03)5363-3609/FAX(03)5363-3610
E-mail:prize@ms-fund.keio.ac.jp
URL=http://www.ms-fund.keio.ac.jp/prize2001.htm