医学界新聞

 

第14回日本内視鏡外科学会開催

「内視鏡手術の再評価と展望」をテーマに


 第14回日本内視鏡外科学会総会が,さる9月20-21日の両日,加藤紘之会長(北大教授)のもと,札幌市のロイトン札幌において開催された。
 メインテーマに「内視鏡手術の再評価と展望」を掲げた今学会では,胆石症,自然気胸,大腸癌,食道癌,肺癌などの「手術成績の再評価と将来展望」と題したシンポジウム6題と,認定制度,医療過誤,医療経済をテーマとしたパネルディスカッション3題を企画。また,救急医療,ピットフォールなど,現場の課題を取りあげたワークショップ8題の他,特別企画として第27回日本関節鏡学会との合同シンポジウム「各科領域における内視鏡・関節鏡下手術-他領域に学ぶ手術器具の工夫」や新しい試みとして,症例ビデオを検討するランチョンビデオセッションが行なわれた。


内視鏡手術の「技術」認定制度

 パネルディスカッション「内視鏡手術の認定制度をめぐって」(司会=帝京大 山川達郎氏,大阪中央病院 大橋秀一氏)では,産婦人科,泌尿器科,整形外科,呼吸器外科,消化器外科の5関連学会代表が,同認定制度に対する期待と調整の必要性を報告。これを受け,徳村弘実氏(東北労災病院)が,「内視鏡外科認定制度の基準案」を,瀧口修司氏(阪大)が「内視鏡手術の認定制度をめぐって-若手内視鏡外科医からの提言」を発表した。さらに,白日高歩氏(福岡大)が指定発言を,出月康夫氏(東大)が特別発言を行なった。
 まず,同認定制度検討委員会委員長でもある山川氏が,同委員会での検討結果を報告。同制度の目的は,「進歩する医学・医療の恩恵を国民が享受できるよう,各専門領域において内視鏡外科手術に携わると申請された医師の,理論を実地に応用する技術を評価・認定し,内視鏡外科の健全な発展を推進すること」と述べ,他学会の専門医制度に準じるものではないことを強調。さらに,専門領域を異にする各種学会員からなる内視鏡外科の特殊性を背景に,「関連学会の現状を聞き,整合性をどこに求めるか,また認定方法について総合的に討論する」と本パネルの趣旨を説明した。
 産婦人科領域からは,明楽重夫氏(日医大)が,日本産婦人科内視鏡学会で,すでに指導医の認定制度が検討されていることを報告し,両制度の整合性を課題とした。
 泌尿器科領域からは,松田公志氏(関西医大)が,日本Endourogy-ESWL学会で独自の認定を行ない,コンセプトをすり合わせた上で追認するシステムを作ることを要望。尿路内視鏡を除く体腔鏡のみを対象に,(1)審査は各専門領域で別個に,専門分野ごとに対象臓器を明示,(2)認定レベルと指導レベルの2段階式,などを提案した。

技術認定制度の意義と課題

 整形外科領域から,出沢明氏(帝京大)が,関節鏡手術を対象に含めないことを前提に,同制度に参加することを示唆。課題として,(1)技術を認定できるか,(2)認定水準を画一化する方法,(3)患者が医師を選択する基準となり得るか,などをあげた。
 呼吸器(胸部)外科領域からは,河野匡氏(虎の門病院)が,従来と異なる技術が要され,医療事故の報告もあるなど,同制度の必要性を強調。患者にとっての情報提供となる上,施設間格差を是正し,医療の質をあげる社会的責任の遂行にもつながるとの有意性を述べた。さらに,(1)書類審査とビデオ審査,(2)推薦人や審査医師の氏名も認定証に併記するなど,具体的提案をした。
 消化器外科領域から,木村泰三氏(富士宮市立病院)が,日本消化器内視鏡学会との調整の必要性を示しながらも,同制度の必要性に賛意を表した。
 これを受けて徳村氏は,「内視鏡外科手術は,安全域が狭く,医師間・施設間で格差が生じやすい。また,患者の期待が大きいため,不成功時の落胆が大きい」と問題点を指摘。十分な知識と経験,安全性を重視する姿勢を問う,ある程度厳格な認定基準が必要と主張して,私案を提示した。
 次に瀧口氏が,無編集ビデオ,またはテレビ会議システムなどを用いた複数の審査員による実技試験を念頭に,その審査員となる内視鏡手術の指導医の絶対的不足を指摘。「取得する意義が確立された,確固たる制度を構築していただきたい」と結んだ。
 最後に,出月氏は特別発言で,「この制度の目的は,あくまで患者への安全な手術の提供を保証すること」と強調し,さらなる論議の方向性を示唆。今後,日本内視鏡外科学会では,内視鏡外科手術の技術認定制度の早期実現をめざし,議論を重ねる。


●日本内視鏡外科学会 第4回「伊藤賞」発表

 第4回日本内視鏡外科学会「伊藤賞」の授賞式が,2001年9月20日に,第14回日本内視鏡外科学会総会中の学会評議員会の席上で執り行なわれた。
 本賞は,1994年に急逝された日本における内視鏡下手術導入のパイオニアである故伊藤徹氏の遺族の寄付金を基金とし,同学会の機関誌「日本内視鏡外科学会雑誌」に掲載された論文の中から,最優秀論文として編集委員会より選ばれた論文に対して授与されるもの。
 今回の受賞論文には,狭間研至氏(宝塚市立病院呼吸器外科)の「自然気胸に対する細径胸腔鏡下レーザー焼灼術の検討」(同誌第6巻2号)が選ばれ,授賞式では,出月康夫理事長(東大名誉教授)から,同氏に賞状ならびに賞金と記念品が手渡された。