医学界新聞

 

第48回日本臨床検査医学会開催

「検査2001」――第41回日本臨床化学会と合同で


 第48回日本臨床検査医学会総会が,さる8月26-29日の4日間にわたり,河野均也総会長(日大教授)のもと,横浜市のパシフィコ横浜において,第41回日本臨床化学会年会(櫻林郁之介年会長〔日本臨床検査医学会長,自治医大大宮医療センター〕)と合同で,「検査2001」として開催された。
 メインテーマに「21世紀へのチャレンジ」を掲げた今学会は,昨年11月に「日本臨床病理学会」から改称されてから初の学会であるだけでなく(弊紙2417号参照),1951年に臨床病理懇談会として発足以来50周年を迎え,日本臨床検査医学会にとって,記念すべき節目の総会となった。
 これを受け,創立50周年記念式典が開催されるとともに,特別講演1「臨床病理学会50年の歩み」を河合忠氏(国際臨床病理センター)が講演。加えて,会長講演「臨床検査医学と臨床化学の架け橋」(櫻林氏)や,昨今の分子生物学の進展に合わせた特別講演2「ヒトゲノム解析研究の展望」(慶大 清水信義氏),学士院賞を受賞した須田立雄氏(埼玉医大)による招待講演,アジア各国の代表を招いての「アジア諸国の臨床検査精度管理」の他計7つのシンポジウム,5題の教育講演,7題の専門部会講演会が行なわれた。この他,フォーラム「drg/pps対応臨床検査パート II」が企画されるとともに,機器・試薬展示会を初めて同会場内にて併催する試みがなされた。


「臨床検査関連学会週間」も視野に

 同学会が関連学会と共通プログラムで合同開催されるのは初めてのこと。また今学会では,日本血液検査学会,日本臨床微生物学会との共催シンポジウムも盛り込まれ,関連学会と歩調を合わせて,新しい検査医学創造をめざす方向性が示された。
 会長講演の中で櫻林氏は,その意義として,学会参加者の利便性と,学会活動の活性化の2点をあげた。特に,日本臨床化学会との協調が期待される分野として,(1)臨床検査の世界標準化,(2)EBLM(Evidence‐based Laboratory Medicine),(3)臨床検査の倫理性,(4)臨床検査室のクオリティマネジメントをあげ,「医学の進歩に伴い,臨床検査はますます重要性を増す。臨床検査関連学会週間開催も視野に入れて,手を携え,臨床検査の質向上を図るとともに,臨床検査の社会的認知度を高めていかなければならない」と意欲を述べた。
 同学会の第3代学会長として特別講演を行なった河合氏も,旧臨床病理学会がさまざまな問題を抱えながらも医療界に貢献してきた50年の歴史を概説。「今後の臨床病理・臨床検査の発展のために,臨床検査関係者の英知と努力の結集が不可欠」とし,(1)日本医学会分科会のステータスの維持,(2)学術レベルの一層の向上,(3)IT技術を十分に活用できる体制づくり,などを「21世紀のチャレンジ」として提示した。

AP・CPの卒後教育の充実めざし

 シンポジウム「日本のAP・CP卒後教育カリキュラム」(司会=帝京大溝口病院 水口國雄氏,防衛医大病院 玉井誠一氏)では,まず玉井氏が,「現在のAP(anatomical pathology)およびCP(clinical pathology)の養成カリキュラムは,病理学を専門とする医師(pathologist)を養成するものとしては不十分。早急になされつつある医学教育改革を契機に,有能なAP・CPを養成し,21世紀の日本医療の質を向上させるカリキュラム作成のための方策を見出したい」と主旨を解説。これを受けて6名のシンポジストが登壇した(写真)。
 初めに,深津俊明氏(名古屋掖済会病院)が,「日本版AP・CP教育カリキュラムの必要性」を講演。病理医および臨床検査医両方の認定試験に合格した経験から,「臨床検査医学は,検査室での実学であり,豊富な症例経験が必要。AP・CP養成にはこのための系統的なトレーニングとカリキュラムが必要」と述べた。

米国のAP・CP教育との落差

 米国でAP・CP教育を受け,American Board of Pathologyを1962年に取得した河合氏は,「戦後の米国でのAP・CP教育と日本への移植」と題して発表。Pathologistの80%がAP・CP両方のBoardを持つ米国の現状と,当時のAP・CP養成プログラムの利点を概説。その上で,「現在,独・仏などのヨーロッパ,ラテンアメリカ,アジアではAP・CPの分化傾向が高まる一方で,英語圏(英・米・豪)ではAP・CPの統合が確立した。このような世界的背景のもと,グローバリゼーションに適応するような日本独自の方式を,いかに生み出すかが問われる」と提言した。
 続いて,近年米国でAP・CPのレジデント研修を受けた武井英博氏(自衛隊札幌病院)が,「現在の米国AP・CP教育カリキュラム」と題して講演。米国のAP・CPトレーニングの特長として,(1)毎日の充実した教育用カンファレンス,(2)スタッフにとって教育は義務であり,懇切丁寧に指導する体制,(3)各ローテーションでの相互評価など,研修環境の整備を強調した。

日本のAP・CP教育の現状

 次に,野々村昭孝氏(金沢大附属病院)が,「日本の大学でのAP教育カリキュラム」と題し,全国の国立大学(計42校)に行なった調査から,「病院病理部が設置された大学33校のうち,すでに病理研修プログラムを持つのは19校で,実際に研修医を受け入れている大学は13校のみ」と報告。研修スタッフ数の不足,研修設備の未整備を指摘。今後のAP教育の問題の1つに,CP志望の研修医の受け入れの是非,また受け入れた場合の研修体制のあり方などをあげ,合同研修へは懸念を示した。
 続いて,「日本の大学のCP教育」で,熊坂一成氏(日大)は,研修医が教育目標に達するためには,適切な学習方略(Learning Strategies,LS)が不可欠として,特に,大学病院でのCP育成のLSとして,実技指導を含む臨床検査医自身による教育をあげた。さらに日本のCP教育の問題点として,(1)臨床検査医学講座・臨床検査室の教員数の絶対的な不足,(2)ロールモデルとなるプロの教員の不足,など指導者の不在を強調し,「AP・CP教育のための指導者選考もまた急務である」と指摘した。
 最後に,松尾収二氏(天理よろづ相談所病院)が,「日本の臨床研修病院でのAP・CP教育カリキュラム」を発表。氏は,「APとCPは本来別個ではなく,両者を合わせて臨床病理とするもの。両者は役割分担し,互いに補い合うことができる」と述べ,共通の必修科目に加え,選択科目をとり入れての選択的かつ的を絞った合同研修プログラムを提案。「日常診療の質の向上に資するとともに,専門性の高い業務・研究を行なう際の糧となる,基本的かつ幅広い知識と技術,物事を多面的に見る技量を養うことが可能である」と述べ,「病院としてAPとCPの合同研修や共同作業は,メリットはあってもデメリットはない」とAP・CPの融和の意義を強調した。