医学界新聞

 

新しい時代が問う看護研究の方向

第27回日本看護研究学会開催


 第27回日本看護研究学会が,さる7月27-28日の両日,泉キヨ子会長(金沢大)のもと,金沢市の金沢市観光会館,他で開催された。
 「新しい時代が問う看護研究の方向」をメインテーマに据えた今学会では,会長講演「人間の持てる力を引き出すリハビリテーション看護学の追究」をはじめ,米の精神看護ナースプラクティショナーであり,ワシントン大大学院の臨床教員も務める田中勝子氏(シアトル・ベテランズホスピタル)による招聘講演「臨床現場に活かせる看護研究」や,川島みどり氏(健和会臨床看護学研究所)による特別講演「看護学の到達点と新世紀の課題-看護技術論の立場から」,教育講演「新しい時代における看護研究の方略-日米の看護研究比較を通して」(阪大 牧本清子氏),さらにシンポジウム I「看護現象の着眼と研究の方法-質的研究を中心に」,同 II「看護におけるエビデンス」,ワークショップ I「ITが看護実践および看護研究に及ぼす影響」,同 II「実践と研究における看護理論」などが企画された。なお,一般演題(口演・ポスター)発表は307題にのぼった。


過酷な経験から生まれた「経験知」

 川島氏は,「外来に看護は不要」と言われていた時代からの半世紀を振り返り特別講演。自身が取り組んできた看護の工夫が実践の研究に結びついたことや,「現在よりも少ない人員配置で過酷な労働を強いられる中で,『今日,この子たちは幸せな療養生活を送ることができただろうか,いい看護はできたのだろうか』との振り返りをしていた」と語った。また,それらのことが,実践における法則性ともなる「経験知」となったと述べるとともに,現在取組んでいる「看護音楽療法」を紹介した。

「質的研究」をめぐって論議

 また,「質的研究を中心に,看護現象の着眼と研究の方法という観点から,参加者とともに考える」ことを目的として,天津栄子(石川県立看護大),安酸史子(岡山大)両氏を座長に開かれたシンポジウム I(写真)には,高山成子氏(福井医大),水野道代氏(石川県立看護大),萩野雅氏(碧水会長谷川病院),中山洋子氏(福島医大)の4名が登壇。
 演者らは,看護現象の着眼の仕方,研究方法の選択とそのプロセスにおける迷いや問題点,研究の成果を実践現場にどう還元するのか,質的研究を発展させるために取組むべきことなどを述べた。その後のフロアを交えた総合討論の場では,「質的研究は,大学院生が多く利用しており,現場の研究とはなっていない」,「事例検討も質的研究の1つ。事例検討ももっと認めるべきではないか」などの意見が出された。看護界でもさまざまな形で導入が図られている「質的研究」ではあるが,登壇演者もそれぞれにとらえ方が違っており,質的研究の方法論の共通点と相違点が浮き彫りにされることはなく終わった。これからの看護研究の課題と言えるだろう。

 ワークショップ I(コーディネーター:兵庫県立看護大 川口泰孝氏)には,ITに関心のある参加者が集った(内容は本紙2447号「特別編集」を参照