医学界新聞

 

第35回日本作業療法学会開催


 さる6月21-23日の3日間,日本作業療法学会が生田宗博会長(金沢大,写真)のもと,金沢市・金沢市文化ホールその他において開催された。メインテーマは「新世紀の創造-作業療法技術科学の研究と展開」。
 今学会では,会長講演の他,樋口恵子氏(東京家政大)による公開講演,技術講座4題(高次脳機能障害,療育,福祉用具選択,作業療法の評価),シンポジウム1題,特別講演には「鼎談-21世紀の作業療法展望」他,セミナー4題などが企画された。

日常臨床から作業療法科学技術を生み出す

 学会長の講演に引き続き,メインテーマに添った形で行なわれたシンポジウム「作業療法技術科学の研究と展開」(司会=今寺忠造氏 青山採光苑リハビリテーションセンター)では,深川明世氏(東京労災病院リハ科),中村春基氏(兵庫県立総合リハセンター),大川弥生氏(国立長寿医療研究センター)の3名がシンポジストとして登壇。
 最初に深川氏は,自身が勤務する地域密着型急性期病院でどのような臨床研究が可能かを,実践を通して紹介。しかしその半面,多忙の中での研究活動には限界があることも指摘した。
 続いて,中村氏は50床の脊髄損傷病棟で回復期リハを行なう中で,患者さんのリクエストに応える形で試行錯誤を繰り返してきた経験を報告。今後作業療法士が臨床技術学を構築するためには「1人ひとりの患者さんをいかに大事にできるか」にあり,さらに「臨床の成果の上に科学がある」と述べた。
 一方,大川氏は,日常臨床での疑問から仮説を立て,それを実証していくという,基本的な研究技法と,それに則って自身が展開してきた研究例を紹介。その1つに,「果たして車いす自立は本当にADLの向上なのか」との疑問から,実際に車いす自立スキップ群と,車いす自立群を比較したところ,前者のほうが最終的な自立度が高かったという結果も提示した。氏は最後に,「今後は目標指向型アプローチが必要」と述べた。
 口演終了後,生田会長も議論に加わり,急性期における作業療法士の関わり方や,早期リハへの重要性,さらに今後の方向性などについて意見が交換された。