医学界新聞

 

臨床看護の質の向上をめざして

第51回日本病院学会(看護部門)開催される


 さる6月21-22日の両日,第51回日本病院学会が,井手道雄学会長(聖マリア病院長・理事長)のもと,福岡市のアクロス福岡において開催された(本紙2449号に詳報予定)。今学会は,「新世紀・病院の進む道―激変する社会環境における生命の尊厳」をメインテーマに掲げ,学会長講演に加え,日本病院会長中山耕作氏,日本医師会長および世界医師会長を務める坪井栄孝氏の講演の他,特別講演2題,シンポジウム6題が企画。なお,今回より,従来の「医師部門」「看護部門」という分け方を廃し,一般・要望演題でも共通のテーマを医師・看護職をはじめとする多職種の視点から論じるなど,新世紀のチーム医療の重要性を意識した新しい試みがなされた。
 特別講演(2)では,「マザー・テレサからの伝言」と題して,千葉茂樹氏(日本映画学校)が講演。氏は,マザー・テレサの記録映画制作時のエピソードから,インド・カルカッタの「死を待つ人の家」での貴重な映像を交え,示唆に富むマザー・テレサのメッセージを紹介。医療における人間の尊厳と,看護職の「プロッフェショナル・マザー」としての役割が重要と述べた。

臨床看護における効果的教育とは

 看護職が中心となったシンポジウム「臨床看護の4つの向上をめざした教育と方策」に先立ち,「臨床看護能力の効果的教育について」を講演した日野原重明氏(聖路加国際病院)は,冒頭で「現在の看護職には,フィジカルアセスメント能力が欠如している。また,臨床看護に日頃関与しない者が,教員を務めることに危惧を覚える」と看護教育の現状を批判。看護職に必要な要素として,(1)専門性,(2)使命感,(3)人間性をあげ,これらの育成が,看護教育の使命であると述べた。また,このための卒後臨床研修の必修化の必要性を強調した。
 これを踏まえ,シンポジウム(司会=大阪府立看護大 小島操子氏,日野原氏)では,指導的立場にある4氏が,看護教育実践を通して,臨床看護の質の向上を論じた。
 中村恵子氏(青森県立保健大)は,「教育と実践の場の連携」と題して,同大学と県立病院とのユニフィケーションの実態を紹介。氏自身を含め大学教員で臨床看護職を兼務する者が9名,病院職員で臨時教授等を兼ねる者が13名と報告し,ユニフィケーションの利点と課題を述べるとともに,「臨床での気づきを常に再認識できる」ことを強調した。
 次に,「卒後教育―プリセプター制をどう生かすか」と題して,村上睦子氏(日赤医療センター)が登壇。同センターにおけるプリセプター制の現状とその効果を報告した。また,プリセプター制が機能する時期に必要な人員数は,通常の1.75倍となるなど,その課題を指摘。プリセプターのための研修や,実践者同士の助け合いが不可欠とした。
 続いて,岡谷恵子氏(日本看護協会)は,「専門看護師・認定看護師の導入とその成果」を発表。現在,専門看護師は計19名で家族看護,感染管理看護など計7分野の教育プログラムが完成。認定看護師は計409名で本年より糖尿病看護の教育が開始されるなど,同制度の現状を報告。援助方法の増加,患者満足度の向上など,その効果が浸透する一方で,いまだ制度の存在が十分認知されないなどの課題を提示し,日本看護協会として,同制度の質的・経済的効果を明らかにするなど,今後の方向性を示した。
 最後に,長野玲子氏(福岡市民病院)が,「院内教育と評価システム」と題して,院内教育の有効性について講演。教育効果の評価法の確立が不十分であることを背景に,今後,(1)患者をはじめとする評価者との対話を中心とした,自己確認できる評価,(2)市場原理に対応した外部(院外社会)に通用する評価,(3)臨床看護能力のさらなる育成を促す評価,の必要性を述べた。