医学界新聞

 

「看護教育,21世紀の叡智を求めて」をテーマに

第2回日本赤十字看護学会開催


    日赤看護大が創立15周年を迎えた昨年5月27日に,「赤十字の理念に基づき,会員相互の研鑚と交流を図り,看護学の発展をめざす」ことを目的に日本赤十字看護学会(理事長=日赤看護大学長 樋口康子氏)が発足。同日,発会式に引き続き第1回学術集会を開催したが,同学会の第2回学術集会が,さる5月26-27日の両日,濱田悦子会長(日赤看護大学部長)のもと,千葉市の幕張メッセで開催された。なお,今回のメインテーマには「看護教育,21世紀の叡智を求めて」を掲げた。
 同学会は,「全国の赤十字看護関係機関と協力しながら,看護の教育・研究と実践を統合し,推進させていく母体」(樋口理事長)として位置づけられているが,設立1年目で,1393名(5月26日現在)が会員登録をしている。

 今学術集会では,会長講演「次世代を担う若者を育てよう」をはじめ,事例検討2題,および51題の一般演題発表の他,赤十字看護において重要となる I「国際救護救援活動」,II「赤十字の看護教育」,III「赤十字の看護実践(リスクマネジメント)」,IV「実践看護を育てる臨床研究」の4つのテーマセッションを2日目の午後に設定。各会場ではそれぞれの話題提供の後,フロアを交え熱心な討論が行なわれた。

日赤の英知で臨床と研究の連携を

 なお,濱田氏は会長講演で,現代の若者像を語るとともに,看護大学と短大,および一般大学との学生の質の違いや目的意識の違いなどを,私立大学協議会の調査報告などから分析して解説。総合的な判断力など評価基準は,一般大学生より看護系学生のほうが高いことを指摘するとともに,「育成は過保護ではなく対等であることが求められる」など,教員自身の意識改革,教育研修の必要性,および臨床と教育現場がともに教育にあたる重要性を強調した。
 また,テーマセッション IV では,陣田泰子氏(聖マリアンナ医大横浜西部病院),小宮敬子氏(日赤看護大)の司会のもと,井上智子氏(東医歯大)と奥原秀盛氏(日赤看護大,現NPOジャパンウェルネス)が話題提供者として登壇。指定討論者として,川島みどり氏(健和会臨床看護学研)が発言を行なった。
 井上氏は,「研究実践と看護職者の成長」に焦点をあてて口演。看護職者の研究は,日常業務の不都合や患者が被る不便さの解決のために,看護用具などの工夫・開発など,研究的・問題解決に取組む第1段階から,看護現象の真実を明らかにし,理論や知識体系の構築に寄与する「真実の探求」を図る第3段階までを解説した。また,院内研究の講評にかかわってきた経験から「やる気につながる研究講評」も提示。その上で,(1)看護実践能力と研究能力は相互に密接に関連しあう,(2)片方の育成が自動的に他方の能力育成にはつながらない,(3)研究のノルマは能力育成のよいチャンスとなる,(4)実践能力と同様,研究能力にも成長段階がある,とまとめた。
 一方奥原氏は,多くの病院・施設で行なわれている臨床看護研究は,いわゆる「やらされ研究」とし,「臨床実践者は研究を行なう必要があるのか」との前提で口演。「看護は現場で行なわれている,研究室で起きているのではない」と述べるとともに,「やらされ研究」は研究に対する嫌悪感の源である一方で,研究への興味を引き起こすきっかけともなるもの,と相対する考え方ができることを指摘した。また,井上氏同様に病院での研究指導にかかわってきた経験から,「『研究発表も給料のうち』と考えている看護職がいる一方で,経験5-6年目の人は『勉強がしたい』と積極的に研究へ取組む人が多い」と述べ,継続研究,共同研究,施設間連携から学会活用へと研究の視野を拡大していく必要性を説いた。
 これらを受けて川島氏は,「実践家を育てるためには,『看護研究』が親にならなければならない」「現象を自分の言葉で記述することが重要であり,看護職はトレーニングの必要がある」などと述べるとともに,「研究者は研究指導者のほめ言葉に酔っているだけではだめ。厳しい批判に耐えてこそ成長していくもの」と指摘した。総合討論の場では,臨床の現場と研究者の間の連携やフィードバックの必要性などに関し,熱い討論が続けられた。