医学界新聞

 

精神科看護の新たな展開に向けて

第26回日本精神科看護学会が開催される


 日本精神科看護技術協会(櫻井清会長)の第26回栃木大会(総会および第26回日本精神科看護学会)が,さる5月23-25日の3日間,栃木県・宇都宮市の栃木県総合文化センターで,「看護者の自立-精神科看護の新たな展開」をメインテーマに開催された。
 同大会においては,基調講演「看護者の自立-精神科看護の新たな展開」(同協会常任理事,慶大 末安民生氏)や文化講演「小説を書く時間」(作家 林眞理子氏)の他,メインテーマを取りあげたシンポジウム(司会=同協会第1副会長,前浅香山病院 藤丸成氏),および一般演題発表が行なわれた。また今大会では,新たに参加者が自由な討議をする場として「サテライトミーティング」を企画。(1)SST・心理教育,(2)情報開示と記録,(3)隔離・拘束の3つのテーマで開催され,各会場には大勢の参加者がつめかけた。なお,一般演題発表も質疑応答時間を増やすなど,新たな形式での試みも展開。さらに,プロジェクト報告として,「精神科看護の臨床能力測定のための評価項目」を萱間真美氏(東大)が発表。「臨床能力の客観的な評価や,精神科看護の機能と効果を明確にするための研究に基礎的データとして活用が可能」と述べた。

事務局移転を考慮に入れた新たな展開

 一方,同協会の総会では,協会事務局の強化を図るべく,新たに「協会内専門職の活性化と地方の人材の活用と育成」を目的とした「人事交流制度の創設」が承認。役員改選では次期役員として,櫻井氏に代わり藤丸氏が会長に就任,坂田三允氏(群馬県立精神医療センター,前第2副会長)と金城祥教氏(静岡県立大,前常任理事)が副会長職に,さらに役員27名中17名が新任となるなど,大幅な若返り人事となった。
 同協会の会員数は昨年より1766名増加の3万7715名(本年3月末現在)。精神保健法が施行された7月1日を「こころの看護の日」と位置づけ,市民向けの行事の実施なども承認された。なお,同協会の今後の課題としては,「利便性を考慮に入れた」都心部への事務局移転や,法人組織から出版事業部門の独立を図る件などが,会員からも指摘された。同協会の次期役員の積極的な対応と新たな展開が期待できよう。

新たな精神科看護の専門領域を提言

 シンポ「看護者の自立-精神科看護の新たな展開」では,伊藤収氏(久留米大),吉田厚子氏(島根県立湖陵病院),吉川隆博氏(河田病院),千葉信子氏(多摩たんぽぽ訪問看護ステーション)の4氏が登壇(写真)。
 伊藤氏は,精神科看護の専門分化が必要と述べ,同協会が認定している(1)思春期・青年期,(2)救急・急性期看護,(3)リハビリテーション,(4)老年期,の4精神科看護領域の他に,新たにSST,レクリエーション,デイケアなどの領域の認定を行なうべきと提言した。