医学界新聞

 

関心高まるACLSトレーニング

青木重憲氏に聞く(ACLS研究会)


―――ACLSコースが初めて臨床救急医学会が協賛する形で,学会の会期中に行なわれました。
青木 ACLSコースは2次救命処置をエビデンスに基づいて標準化することを意図しています。米国の学会では,このような教育セミナーは以前より開催されてきましたが,日本では初めての試みです。臨床現場で役立つ知識・技能習得のためのコースを会期中に行なうことができたのは,非常に意味のあることだと思います。野口宏会長はじめ関係者のご理解,ご協力の賜物です。
―――参加者はどのような方々ですか?
青木 当初,研修医の方々を主な対象に考えていましたが,教育・研修現場で指導的な役割をされている先生方の参加も多くありました。ACLSのトレーニングを卒前・卒後の教育で実施しようという意欲を持つ施設が,急速に増えつつあるという印象です。

AHA2000ガイドライン

―――昨年,AHAなどが中心になってまとめた,新しい心肺蘇生法のガイドライン(以下,「2000ガイドライン」と略)が話題となっています。どのようにお考えですか?
青木 2000ガイドラインが注目される理由は3つあると思います。
(1)社会全体が今日,エビデンスを基にした,本当に臨床に役立つ知識・技術を求め出したということ
(2)内容的に大きな改訂が加えられたということ
(3)「インターナショナル」と銘打たれており,国際的なスタンダードであるということを意識して作成されていること です。
 (2)の内容についてはこれまでに詳細な検討を行ないました。頻脈のアルゴリズムが複雑でわかりにくいことや,AED(半自動式除細動器)の市民による使用に法的な問題があることなどの問題点はありますが,部分的には本邦ですぐにでも導入可能だと思います。しかし,現時点では,米国でも完全に2000ガイドラインに準拠したコースは実施されておらず,教育用のテキストもできていない状況なので,当面は,可能なものから2000ガイドラインを一部活用しつつも,これまで通り,主に1992年のAHAガイドラインに準拠した内容でACLSコースを行なっていく予定です。AHAも「あわてないでいい。別に間違ったことを言ってきたわけではない」と言っています。
―――ACLSに関心を持つ医学生・研修医に一言お願いします。
青木 日本では,まだ心肺蘇生法のスタンダードが確立されているとは言えない状況です。米国には,「重要なことは誰でも適切にできるように統一しよう」という強い意思がある。まずそこに学ぶべきです。そしてそのような考え方から標準化されたACLSを学ぶことは,患者さんが恩恵を受けるためには何が必要かを考える,よいきっかけを与えてくれます。その意味でも,ぜひACLSを学んでいただきたいと思います。
(文責:「週刊医学界新聞」編集室)