医学界新聞

 

第95回医師国家試験合格体験記


 

まずは国試合格,そしてその後の
臨床に向けて早めのスタートを

野崎英夫(阪大卒)

 第95回医師国家試験を終えて個人的に感じたことを綴りたいと思います。参考になれば幸いです。
 私は夏休みにいくつかの臨床研修病院へ見学に行った後,8月中旬から国家試験に向けての勉強を徐々に進めていきました。卒試に合格するための勉強を最低限しておいて,後は自分の興味のある分野の勉強,重要疾患の病態生理のまとめ,おもしろそうな参考書を読むなどしていました。12月初旬に卒試が終わってからは,『クエスチョンバンク』(メディックメディア)の内科,外科,小児科,産婦人科と,『アプローチ』(医学評論社)のマイナー科,模試の受験とその復習,そしていわゆる国試対策問題集を中心とした,いわゆる国試対策の日々でした。勉強の際には疑問に思ったことは教科書,雑誌を参考に納得するまで調べるということを繰り返していました(国試対策の丸暗記勉強は国試後に頭に残りにくいのですが,自分で興味を持って調べたことは頭に残りやすいです)。

診断・治療へ至る思考のプロセスを重視した勉強を

 自分の不勉強を棚に上げて敢えて言うと,合格後の臨床現場で役に立つ知識を身につけるための勉強を学生時代にしたほうがよいと思います。具体的には疾患を病態生理から理解,記憶した上で,ケーススタディ問題集などを使って症候から鑑別疾患を考え,検査,診断,治療を行なうという思考プロセスを大切にした勉強をしたほうがよいでしょう(『内科診断学』〔医学書院刊〕の症候編がおすすめです)。こういった勉強も国試対策に十分役に立つと思います。そうしておいた上でいわゆる国試対策を最後の3-4か月にすればよいのではないでしょうか。勉強開始が早いほどその余裕が出てくると思います。私もその傾向がありましたが,6回生の秋くらいから本格的に勉強を始めると,国試対策の丸暗記に終始してしまいがちです。
 今回の試験では過去問の焼き直し的な問題ももちろんあったのですが,じっくりと問題文から鑑別疾患を考えながら診断をつけた上で,その検査や治療を考えていくような問題も多くあったように感じました。キーワードを頼りに選択肢を選ぶことに慣れていると,そのような問題を解くことは難しいでしょう。重要な疾患については特にしっかりと理解して,病態生理,鑑別疾患,検査,治療などをまとめておくといったことが必要かと思います。
 今回から試験問題が回収されることになり,自己採点ができなくなりました。そのため,私は発表までの約1か月の間は必修と禁忌についての不安を感じていました。国試対策はいくらやってもキリのないものですし,本番でのミスも起こりうるものです。
 しかし必修と禁忌については,時間をかけて自分で納得いくだけの対策を講じておくことが精神衛生上必要かと思います。
 皆さんが無事国試に合格し,医師として活躍されることをお祈りしています。


ゆっくり,着実に

斎藤純代(宮崎医大卒)

 6年生のみなさんは,国家試験まで1年を切ったということで,不安と少し漠然とした焦りを感じていながら,でもまだ大部分の人が,国試というものを遠い存在に感じている,そんな時期ではないでしょうか。
 これ程長い期間,BSLをする大学は少ないと思いますが,私たちの大学では4年の後期(10月)から6年の前期(9月)まで,BSLが2年間あります。そして卒業試験が10月から12月まであり,国家試験形式の卒業試験を実施する大学が多くなっている中,各科の教授が作る独自の問題(大部分が筆記問題)となっています。そのため,本格的に国家試験の勉強が始められるのは1月以降となります。
 そこで私は5年の10月頃から,遅い人でも6年の夏頃までには国試の勉強を始めていたように思います。5年のうちは仲のよい友だち数人と,1週間に1回,2-3時間で『クエスチョンバンク』の臨床問題25-30問くらいをこなす,ゆっくりとしたペースで,おしゃべりに花が咲く本当に楽しい勉強会でした。私は予習として,『病態生理できった内科学』(医学教育出版社)と『STEP』(海馬書房)のどちらかと,『イヤーノート』(メディックメディア)を読み,その範囲の『クエスチョンバンク』を解いていました。
 6年になってからは少しペースをあげましたが,BSLが忙しく思ったほど進まず,夏休みに2週間ほど勉強会を入れ,『クエスチョンバンク』と92-94回の国試問題を1回終えました。マイナーの勉強は,『国試マニュアル100%シリーズ』(医学教育出版社)と『100問のススメ』(医学教育出版社)を一回通しました。夏休み明けから10月の卒業試験が始まるまでに『クエスチョンバンク』の苦手な範囲をもう1度,臨床問題,一般問題ともにやりました。
 そして一時,国試の勉強から離れ,12月の20日過ぎより溜まっていた模試を2つ終え,午前中は学校に行き勉強会で必修問題を,午後からは家で残っていた『クエスチョンバンク』の2-3回目とマイナーの『100%シリーズ』,『100問のススメ』を1人でするという生活を始めました。
 卒業試験中は昼夜逆転の生活だったので,朝9時に勉強会を始めるというのは大変でしたが,国試を考えるとみなさんも朝確実に起き,頭を使うという習慣を早めにつけたほうがよいと思います。国試の前日まで夜型の生活が変えられなかった人を知っていますが,本当にきつそうでした。幸い結果には問題はありませんでしたが。

みんなの解ける問題を正しく解く能力

 1月,2月は模試も4つあり,1つの模試に3日かかるのですから1週おきに模試があるとなかなか自分の勉強が進みません。でも模試はあるだけ受けたほうがよいと思います。それも1月以降は学校などのきちんと時間が決められた環境で受けたほうがよいと思います。家に持って帰って受ける人も多かったようですが,家で受けると甘えがでます。私などは途中で寝てしまう始末でした。そのときの偽りのない自分の実力を知ることは必要だと思います。模試の結果に一喜一憂することはないのですが,自分がどの分野が苦手で,どこを重点的にやらなければいけないのか,これを知るのに模試は最も適していると思います。
 国試では,みんなの間違える問題を正しく解く能力が必要なのではなく,みんなの解ける問題を正しく解く能力が必要となります。それが医師として必要な能力なのかは私にはわかりませんが,資格試験である国試では本当に重要なことなのです。
 2月の後半から3月の国試直前までは,模試の復習と禁忌肢対策,必修問題をやりました。必修問題は国試の前日までやっていました。でも今回国試を受けた感想としては,94回までは必修問題は30問で簡単に8割を切ってしまいましたが,95回からは100問となり,20問,間違うことができます。それに85%の人が正当しない限り,必修問題にはならないのですから,そんなに心配することもなかったと思われます。
 95回国試の全体的な感想としては,難しかったと思います。緊張していたこともあると思いますが,診断さえつかない問題もありました。3日間は長く550問と問題数は多く,本当に体力と精神力の勝負でした。時間割さえ与えられず,集合時間だけ伝えられるだけ。いろいろな情報が飛び交い,私を含め,翻弄された人は多かったと思います。その割に合格率が今までになく高かったことは,嬉しい誤算でした。
 これから国試を受けるみなさんに私が言えることは,大勢の中の1人でいることです。みんなのやることを同じようにやって,同じレベルを保つこと。学生時代にしかできないことも多いのですから,勉強しすぎないように,でも足りないようでは困りますから,勉強会でペースを合わせるのもよいでしょうし,1人でする人は,ときどき周囲の状態をうかがうことを忘れずに,焦らず着実に頑張ってください。


一番大切なのは自分を信じて諦めないこと

橋爪克光知(順大卒)

 医師国家試験をこれから受験する方は,いろいろな不安があると思います。しかし,それはみなが感じていることであって,自分1人ではないのです。
 私が一番大切だと思うのは,自分を信じて諦めないことです。そのためには自分の勉強法を早く見つけることが肝要です。他の人の勉強法はもちろん参考になりますが,それが自分に合ったものかどうか見極める必要があります。国試の勉強は長時間に及ぶのでトーンダウンする時があります。その時に自分の勉強法はよくないのか?この問題集は自分に合ってないのか? などと考えてスランプに陥らないように,早く自分の方法を見つけることです。私も1-2月の模試の結果を見て,かなり落ち込んだ時期もありましたが,やはりそれまでの自分のペースを守ったことが結果的にはよかったと思います。

たかが国試,されど国試

 次に大切に感じたことは,(1)苦手科目,マイナー科目の克服,(2)1日に多くの科目を勉強する,(3)早い時期から過去問題を解きはじめる,ということです。やはり苦手科目は,何となく遠ざけてしまってなかなか勉強できません。また,模試などで出題された印象が薄い分野も後回しにしてしまったりするので,意識的に早くからやるとよいと思います。マイナー科目などは,意外とすぐ解けるようになるものです。
 多くの科目を平均して勉強することも必要です。狭く深くではなく,浅く広くとでも言うのでしょうか。科目数が多いので,狭く深くやっていると,1通り終えた時,最初の頃の科目は忘れてしまっていることが多くあります。限られた時間の中で効率よく勉強するためには必要なことだと思います。
 最後に,最近の国試の過去問題を後回しにすることなく,早い時期からやりはじめることです。似たような問題も結構出題されるので,絞り込みが可能です。また,国試直前に焦るようなこともなくなりますので,早くから最近の国試問題に慣れ親しんでおいたほうがよいでしょう。
 「たかが国試,されど国試」です。決して甘く見てはいけません。自分を信じて最後まで諦めず,みなさん頑張ってください。


大切なことに気づく

脇坂達郎(名大卒)

 先日,医師国家試験の合格発表があり,ひとまずほっとしているところです。この場をお借りして,私たちの後に続く後輩のみなさんに向けて,国試受験を終えて考えたことをお話しさせていただこうと思います。
 国試対策の具体的な方法や時期については,各大学によって実習,卒業試験の事情が異なるでしょうし,最適な勉強の仕方も人それぞれ異なると思われるので,敢えてここでは書きません。ひとつだけ言うならばやはり「必修問題はほんとに怖いし緊張するから,きちんと対策を」ということでしょうか。

ベッドサイドで学ぶことの大きさ

 今回の国試の問題は,明らかに今までの過去問とは傾向が変わっていました。しかし,ガイドラインが改訂され国試が変わったとはいえ,まだまだ国試が要求するものを用意しても有用な勉強はできにくいのが実情だと思います。制度上仕方のないこととはいえ,国試のためのいわば詰め込み勉強に多くの時間を取られてしまうのは非常に残念でした。もっと,実際に必要とされる知識や頭の使い方を訓練したかったし,しなければならなかった,と思います。
 もう十分わかっておられる方もきっと多いでしょう。が,まだ気づいていない方のために書きます。ベッドサイドで,患者さんに近いところで,学ぶことの大きさに気づいてほしい。国試の対策本ではなく,スタンダードとされる教科書を参照して,そのレベルの高さや必要性を感じてほしい。そのために医学英語の知識が必須になることをわかってほしい。1つの訴え,所見からだけでも,考えなければならないことは数限りなく出てきて,A-Eから1つ選べ,というわけにはいかないのだ,そういう考え方の訓練が必要なのだ,と認識してほしい。医療面接や身体診察の奥の深さを理解して,本を読み,できる範囲で実践してほしい。POSやEBM,ACLSといった,臨床現場で重要なツールとなるであろう事柄について学んでほしい。
 これらのことは,国試では今まで十分に問われてこなかったため,国試の準備をするだけではあまり目にすることのなかった事柄です。しかし,臨床の場ではすぐにでも必要とされ,そして役立つものです。
 残念ながら私はこれらのことに気づいたのが6年生になってからで,4年生の臨床講義や5年生の臨床実習の期間をかなり無駄に過ごしてしまいました。そして勉強が非常に不十分なまま卒業してしまいました。みなさんは,ぜひぜひ臨床実習を大事にしてください。そして生きた勉強をしてください。学生のうちに。

考えなければならないことは
国試とは離れたところにある

 本当に,気づくのが遅かった。これから必死に勉強しないといけないな,とかなり不安です。しかし,おそらく日常業務に追われ,じっくり勉強する時間はとりにくくなるでしょう。非常に残念です。後悔しています。
 みなさんは,これに気づいてほしい。できるだけ早く,私のように後悔をしないように。本当に大切な勉強や,考えなければならないことは,国試とは離れたところにある。国試をパスできるだけの準備は必要だけれども,それに甘んじることなく,将来の糧となるような勉強の重要さに気づき,その方法を模索してほしいと思います。
 しかし,国試用の詰め込み勉強もある程度必要になってしまうのが現実で,そのあたりの割り切りと,双方にかける時間・労力のバランス感覚を維持することが,後々まで生きる勉強をしつつ国試にも対応できる力につながるのでは,と思います。

悔いのない学生生活を

 私の勝手な考えを書かせていただきました。実際にはいろいろな考えの人がいますし,またいろいろなレベルの人がいます。それぞれ,自分の理想や能力,興味の中でさまざまなことのバランスをとって過ごしてほしいです。
 最後に,全国の医学生のみなさん,6年間は長いようで,終わってしまうと非常に短いです。何年生であれ,今を,そしてこれからの学生生活を,勉強の面でもその他の面でも悔いのないように過ごされることをお祈りいたします。


国試はとにかく長丁場

竹内雄一郎(信大卒)

 これから医師国家試験を受験される方にとって,私の経験が少しでもお役に立てばと思い,筆をとりました。私も先輩の先生方によく言われたことですが,心すべきことは,国試はとにかく長丁場だということです。
 私が卒業した大学は,卒業試験が11月から12月のクリスマス直前まで続いたため,いわゆる国試対策を本格的に始めたのは,年が明けてからでした。それでも5年生のポリクリの時から,暇を見つけては,こまめに一般問題の問題集を解いたり,典型的な画像・病理写真を読んだりして,ベースとなる知識を積み重ねていきました。実際,基礎がしっかりしていなければ,年明けから始めたのではとても間に合わないでしょうし,普段からコツコツと勉強していたほうが,結果的に楽だと思います。
 以下,受験生として気になった点について,合格した今の考えをまとめてみました。

合格基準・禁忌肢について

 私が受験した95回国家試験は,前回にくらべて時間割や問題数が大幅に変更されるということで,予備校などからいろいろな情報が耳に入ってきました。これらの情報に戸惑うことが多かったのも事実ですが,大切なことは,そうした情報に振り回されるのではなく,参考程度にとどめ,自分の勉強を着実に進めていくことだと思います。合格基準や禁忌肢の扱いなどについては,誰しも気になるところですが,一度,試験会場に入ってしまえば,1問でも多く正解しようと解答していくしかないのですから。ただ,禁忌肢については,「禁忌Kids」などで確認しておいたほうがよいと思います。

問題集について

 私は『クエスチョンバンク』と『国試データマニュアル』(メディックメディア)を何度も繰り返しました。問題集はこの『クエスチョンバンク』でも『アプローチ』でもどちらでもいいと思います。書店で見くらべて,自分が使いやすいほうを選んでください。試験会場では,多くのあやふやな知識より,少しでも確かな知識が役に立ちます。何種類もの参考書を斜め読みするのではなく,自分が決めたものをしっかり覚えるまで,繰り返し読むことが大切です。本番の試験中にも,「ああ,ポリクリで見たな」という写真が何枚かありました。やはり自分の目で見,耳で聞き,手で触れたものは記憶に強く残るものです。国試の問題も,ポリクリでの体験を重視する傾向にあるように感じたので,ポリクリに積極的に参加して,そうした機会を増やすことも重要だと思います。

試験前日・当日の講座について

 全国のいくつかの試験会場では,国試予備校主催の直前講座が開かれます。私は名古屋で受験しましたが,この直前講座を受けることができました。「予想講座」というだけあって,国試の頻出事項や,出題基準のうち新規の項目,出題基準に載っているがまだ出題されていないものなどについて,多くの時間が割かれました。宿泊するホテルにいても落ち着かないと思い,受講しましたが,期待した以上のものは得られたと思います。私の大学でも,多くの同級生が受講していました。
 繰り返しになりますが,国試は長丁場です。勉強を続けていれば,気分が乗らない時も,調子が悪い時もあります。そんな時,私は信州の地の利を生かして温泉に出かけてリフレッシュしました。自分流の気分転換をはかると,勉強の効率がグッとアップします。また辛い時には,医学部に入学した時の自分の気持ちを思い出して,気を引き締めました。その気持ちを忘れていなければ,国試はきっと無事に乗り切れるはずです。これから受験される皆様のご健闘を心からお祈りしています。