医学界新聞

 

日本の医療情報の電子化:現状と未来

第7回「医療情報の効率化に関する研究会」開催


 聖ルカ・ライフサイエンス研究所(日野原重明理事長)の研究事業である第7回「医療情報の効率化に関する研究会」が,さる4月21日,東京・築地の聖路加看護大学講堂において,「日本の現在の診療記録(診療録,看護記録,その他)の課題-日本の医療情報(診療記録等)の電子化:現状と課題」をテーマに開催された。
 今研究会では,特別講演「医療情報:電子化に向かっての日本の現状と将来について」(高知県・高知市病院組合理事/前島根県立中央病院長 瀬戸山元一氏)の他, 沖一氏(島根県立中央病院事務局),川合政恵氏(同病院看護局),野間口聰氏(用賀アーバンクリニック),亀田信介氏(亀田総合病院長),坂本すが氏(NTT東日本関東病院看護部)らから,各病院における医療情報の電子化の現状報告が行なわれた。

医療連携をめざして

 瀬戸山氏は,「患者不在,待たされる,短時間診療,説明不足,密室,などが20世紀の医療の問題であり,克服すべき課題であった」と指摘。これを積極的に考える必要があるとして,21世紀のキーワードに,(1)患者中心(苦情,要望,不安),(2)情報開示(自己選択,情報管理),(3)安全管理(専門,標準,責任),(4)市場原理(使命,機能,医療経済),(5)IT革命,の5つをあげた。氏は,(1)に関し「医療の主人公は患者であり,苦情は宝物である」と述べた上で,患者が抱える不安として「知識・情報不足」をあげ,「患者は聞き直したくても聞き返すことができない。患者に権限がないと思わせているのが現代医療であり,カルテを見せないことが患者の不安につながる」と指摘した。一方,(2)については情報開示の基本条件として,患者の視点での診療および診療参加をあげ,「診療情報の共有化は最低条件であり,医師だけでなくリアルタイムのチームでの共有化が必要」と述べた。また,そのためには「日本語で書かれた,誰もが読めるカルテ」であることや,時系列記載による1患者1診療録であることの必要性をあげた。
 さらに,良質な医療提供のための「病院統合情報システム」の構築が必要とし,最終的には,医療情報ネットワークシステムによる「医療連携」を示唆。高知県下では,共通のICカードによる診療などの実現に向け,すでに開発に動き出していることが報告された。
 なお総合討論の場では,フロア「ベッドサイドのカルテ記載に関して,紙入力ではなく画面入力としたメリットは」などの質問が出され,「患者のそばにいながら記載することが,患者サポートにつながる」などの回答が演者らから寄せられた。