医学界新聞

 

「日本看護・社会・政策学会」設立へ

プレイベント・イン おおさか
「ナースのエンパワーメント」開催


 「今まで看護は,社会学を利用した看護ケアを行なうなど,社会との関係を重視する教育や臨床でのあり方を提示してきました。しかしながら極言すれば,実際は狭い閉鎖された看護という場に安穏と過ごしているというふうに非難されてもしかたがないような活動に過ぎなかったとも言えます。今回新たに看護と社会との関係を研究し,その成果を可能な限り政策につなげていけるような学会を作りたいと考え,同じ志を持つ仲間に呼びかけることにしました」(日本看護・社会・政策学会「参加のすすめ」より)


看護の研究と実践を政策に

 さる3月17日,「日本看護・社会・政策学会」(JANSP:Japan Academy of Nursing, Society, and Policy)の設立(設立趣意書は別掲)に向けたプレイベント,「ナースのエンパワーメント」が,大阪市のクレオ大阪北で開催された。
 同学会は,1999年7月に「日本の看護を考える会」(第1回テーマ「訪問看護制度の現状」)して発足。その後,「日本の看護政策の現状と課題」(第2回),「看護政策をとりまく問題」(第3回,JANSPに改名),「看護の質の向上をめざして」(第4回),「米国における高齢者看護の現状と展望」(第5回),「退院の質向上への取り組み」(第6回),「質的研究」(第7回)などをテーマに,会を重ねてきた。
 今回のイベントでは,特別招請講演として清水嘉与子氏(参議院議員・前環境庁長官)による「看護と政策」をはじめ,世話人代表である江川隆子氏(阪大教授)の講演「政策的クリティカルパス」,教育講演Ⅰ「自分の仕事は自分で管理するものだ!」(名大教授 中木高夫氏),同 II「看護のポリティカル・ハラスメント」(慶大・前厚生省看護課長 久常節子氏),および鼎談「ナースのエンパワーメントを語る-看護職にできることはなんやねん」(写真,司会・ファシリテーター=中木氏,演者=国立循環器病センター看護部長 高戸サチエ氏,羽島市民病院副院長・看護部長 広瀬チワ子氏,看護アセスメント研究会代表 鷹井清吉氏)が企画された。
 清水氏と久常氏は,ともに看護職者が社会政策にかかわることの必要性を説き,「患者の声,現場の声を反映させるためにも,政治力をつけるための政策を持った組織(団体)となることが必要」と強調した。
 なお鼎談では,「お人よし集団」である看護職が力をつけるための方策や専門性などについて,フロアを交えて論議された。その中で高戸氏は,「看護職は何をする人なのかというアピールがない。『さすが看護婦』と言われるプロの部分を強調していかなければならないだろう」と述べた。
 なお,同学会は明年第1回大会を開催するが,その役割に対しての期待は大きい。
◆連絡先:〒661-0953 兵庫県尼崎市東園町5-57-1 「看護アセスメント研究会」内 JANSP係
 FAX(06)4960-3885

【設立趣意書】

 看護職は,社会の中で仕事を成しながらも,さまざまな社会との摩擦に甘んじてきた。それは,問題意識がまったくなかったわけでもなく,また勇気がなかったわけでもなく,何よりもクライアント(患者)を優先してきたからに他ならない。そして,今まではクライアントの問題意識の水準が低かったせいもあって,水面下に隠れていた諸問題が,現在に至って,意識の高まりとともに浮き彫りになってきたのである。その中にあって,クライアントを守る立場である看護職は,これを放置しておくことはもはやできなくなった。
 私たちは,積極的に看護と社会,クライアントと社会との関係を明らかにし,その成果を可能な限り政策に反映していかなくてはならない。看護職だからこそできることを見つけ出し,社会との摩擦の原因を探り,新たな社会との関係を構築していくために,本学会を設立するものである。
世話人全25名・代表:江川隆子