医学界新聞

 

第9回日本総合診療医学会開催


 さる2月17-18日,第9回日本総合診療医学会が青木誠会長(国立病院東京医療センター,写真)のもと,東京・目黒区の国立病院東京医療センターで開催された。今学会のテーマを「Clinical Problem Solvingを科学する」とし,テーマにそったシンポジウム「Clinical Problem Solvingの科学」(司会=国立病院東京医療センター 伊藤澄信氏,名大 伴信太郎氏)の他,チュートリアルセッション4題などが企画された。
 また同学会では,40歳以下の医師による優れた臨床研究発表を対象に,日野原重明氏(聖路加国際病院名誉院長)の名を冠した「日野原賞」を設立。授賞式には日野原氏もかけつけ,第1回の受賞者である鈴木昌氏(慶大)と鈴木良氏(国立病院東京医療センター)の2人を激励した。

患者の臨床問題解決を多方向から議論

 シンポジウムでは,司会の伊藤氏が開催にあたり「総合診療における専門分化の傾向が危惧されることから,『患者の問題を解決する』という視点から総合診療を見直す時期に来ているのではないか」と,議論の方向づけがなされた。
 最初に尾藤誠司氏(国立病院東京医療センター)が,同病院における臨床問題解決(Clinical Problem Solving;CPS)に向けた「アテンディングアワー」を紹介。これは臨床現場で遭遇する種々の問題を(1)入力,(2)解釈,(3)判断,(4)出力と4つの段階に分類し,問題に対処する道筋を考えるもの。このようなモデルを使うことで,レジデントの問題解決能力の向上をめざしていることを明らかにした。次いで,山城清二氏(佐賀医大)は,日常診療における疑問解決の方法として,同大におけるEBM勉強会を紹介。外来診療における問題解決にEBMの応用は有効であるが,その一方で入院患者においては質の低いエビデンスに頼らざるを得ないことから,入院症例に立脚したCPSの重要性を示唆した。
 続いて吉村学氏(揖斐郡北西部地域医療センター)は,地域医療における診療場面での問題解決のあり方を提示。地域医療において,「『生活の場の中での医療』という視点が重要」と述べた。さらに浅井篤氏(京大)は,医療における多元的な価値観が引き起こす問題について,今のところ体系的にとらえる方法はないとし,今後の課題と位置づけた。さらに氏は「医療現場における価値判断はすべて倫理的判断である」とした。最後に大滝純司氏(北大)は,高校時代までの学習環境と臨床問題を解決するための学習との間には大きな差があることを指摘し,これを埋めるべく氏が北大で実践する成人学習のための技法を取り入れた卒前の医学教育における試みを紹介した。
 すべての口演の後,伴氏は「総合診療医には現場ですぐ解決できない問題を解決する役割もあるのでは」とし,議論を結んだ。