医学界新聞

 

さらなる看護教育の向上をめざして

聖路加看護大学大学院が設立20周年を迎える


 聖路加国際病院の創立者である,トイスラー氏が日本に来日したのが1900年。氏が「看護の質をあげることにより,日本の医療の質の向上をめざす」ことを目的に同病院の附属看護学校を設立したのが1920年のこと。また同看護学校は1964年に看護大学になり,1980年には大学院修士課程を開設。その後1988年に博士課程後期課程の増設を行なっている。つまり,聖路加看護大学の前身であった看護学校設立に貢献したトイスラー氏の来日から100年,建学から80周年,そして大学院設立から20周年を迎えたことになる。
 同大学では,大学院開設20周年を重要な節目ととらえ,さらなる発展を願い,さる1月24日,聖路加看護大学において,記念行事として講演会とシンポジウムを開催した。

看護大学・大学院に求められるもの

 記念講演「聖路加看護大学の過去の歴史と21世紀に向けての展望」で日野原重明氏(聖路加看護学園理事長)は,「看護専門指導者としての能力を高め,社会に寄与するのが看護大学の到達目標である」として,4年制大学の指導者の養成が大学院の使命であることを強調した。
 また井部俊子氏(聖路加国際病院看護部長)は教育講演「大学院修了生の責務」を行なった。氏は,大学院修了者としての責務として(1)説明能力:抽象と具象を行ったりきたりする多くの言語化のための理論,知性の獲得の必要性,(2)知に対しての貪欲さ:知に対する謙虚さが必要。何がわからないかを堂々と言える姿勢が必要,(3)エモーショナルインテリジェンス,エモーショナルコントロールの必要性を提示した。

大学院の未来への課題を語り合う

 シンポジウム「20周年を迎えた大学院とその未来」(座長=同大 堀内成子,射場典子氏)には,同大学院修了者である野末聖香氏(横浜市立市民病院,1995年博士課程後期修了),高田早苗氏(神戸市看護大,1997年博士課程後期修了),田中美恵子氏(東京女子医大,1997年博士課程後期修了),毛利多恵子氏(毛利助産院,現ブラジル在住,1994年修士課程修了)の4名が登壇。なお,毛利氏は,ブラジルからビデオによる参加となった。
 野末氏は,CNS(臨床看護専門師)教育には,臨床でのトレーニングが重要であるとして,「臨床の現場に大学院修了者がいることが普通になることを望む」と発言。その上で,CNSの実習時間の確保,システムが軌道に乗るまでのスーパービジョン支援の必要性を指摘した。また高田氏は,「臨床の場における学部卒者が1割に満たない時代はまだ続く。1人がよい看護をしても全体的な評価とはならない。看護大卒者が現場でよい看護の指導を実践することが必要とされているのではないか」と述べた。一方田中氏は,質的研究手法についての自己体験を語り,毛利氏はブラジルでの「母子保健プロジェクト」に参加している現状を報告した(写真)。