医学界新聞

 

わが国におけるRobotic Surgeryの現況


da VinciとZeusが昨年から導入される

 近年の飛躍的な画像通信技術の発展によって,本格的な「遠隔医療」および「Robotic Surgery」の時代を迎えようとしている。Robotic Surgeryは,外科医が患者に優しい低侵襲手術をより安全で確実に施行できるように,最新のコンピュータ技術を導入することによって実現したものである。
 脳外科領域や整形外科領域では,比較的臓器が固定されているために,早くからナビゲーション下の手術が発達してきた。一方,一般外科領域では,臓器の術中変形が大きく,この方面の開発が遅れていたが,米国で内視鏡外科手術支援装置であるda VinciとZeusが開発され,臨床応用されている。また,心臓外科領域においては,非開胸下beating heartの状態での冠動脈バイパス手術に成功し,画期的な展開をみせている。
 わが国では,昨年より九大と慶大にda Vinciが,阪大にZeusが導入されたが,第13回日本内視鏡外科学会の特別企画「わが国におけるRobotic Surgeryの現況」(司会=慶大 北島政樹氏)では,橋爪誠氏(九大)と大橋秀一氏(阪大)の2氏が両大学の現況を報告した。

Telepresense Surgery

 大橋氏は,Robotic Surgeryの概念および現況について,「“Robotic Surgery”とひと口に言っても,その形態は多種多様であり,今後のコンピュータ技術の急速な進歩によって大きく展開していくことは言うまでもない。コンピュータを駆使して施行される手術のことを総称して〈Computer-Aided Surgery〉と呼ぶが,この一環としてRobotic Surgeryがある。Robotic Surgeryには,Robodocに代表されるNavigationや,da VinciおよびZeusなどのTelepresense Surgeryが含まれる」と概説。また今後の展望と課題に関しては,「Robotic Surgeryは,いまだ発展過程にあるために,技術的,法的あるいは経済的な課題がいくつか残されている。しかし,これらが解決されれば,将来は大きく飛躍・発展していくことが期待される」と述べた。
 さらに橋爪氏によれば,九大では昨年7月より,da Vinciによる内視鏡下外科手術が行なわれ,胃切除術,大腸切除術,脾臓摘出術は世界初の手術例となった。そして,「現段階では触覚や圧覚のfeed-backに乏しく,助手による補助鉗子を必要とするが,micro-surgeryにはよい適応と考える。21世紀には,コンピュータサイエンスを研究基盤としたRobotic Surgeryがますます発展・普及し,医療の発展に多くの面から貢献できることを確信する」と強調した。