医学界新聞

 

あけぼの会 秋の大会
乳がん月間記念講演会開催


 乳がん患者の全国組織である「あけぼの会」(会長=ワット隆子氏)の恒例の行事となった「秋の大会・乳がん月間記念講演会」が,さる10月1日,東京・有楽町マリオンの朝日ホールにおいて開催された。
 あけぼの会は,ワット会長の「乳がんの手術をした者が集まって話し合う場を持つことは,単に体験者同士の救いになるだけでなく,一歩進んで自分たちの体験を生かし,がんではないかと気にやんでいる人,実際に手術を受けて入院している人,手術後,ショックから立ち直ろうとしている人たちすべての助けになろうと努めるのであれば,大変意義のある集まりになると信ずる」という新聞への投稿が契機となって1978年に誕生。
 当初は17人で活動を開始したが,その後(1)機関誌「曙」やニュースレターの発行,(2)母の日と乳がん月間(10月)における検診の促進や早期発見のキャンペーン,(3)講演会・支部集会の開催,(4)全国会員の名簿作成,(5)会員間の親睦旅行,(6)ABCSS(Akebono Breast Cancer Support Service)病院訪問ボランティアなど,ユニークな活動を続けて,現在は3500人を超える会員を擁するに至っている。
 当日の会場は,全国支部から参加した会員およびその家族(主に夫)によって,立錐の余地もないほどの盛況を呈し,あらためて「医師ー患者関係」や「医療の原点」という問題を再考させる場ともなった。


テレサ・ラッサー賞を受賞

 なお,本年3月には,同会の前記(6)「ABCSS」の活動に対して,栄誉ある「テレサ・ラッサー(Theresa Lasser)賞」が授与された。
 同賞は,1952年にアメリカ・ニューヨークで乳がんの手術を受け,その翌年に乳がん患者の病院訪問ボランティアプログラム「Reach to Recovery」を創始した,テレサ・ラッサー夫人の名を冠してアメリカがん協会が創設した賞。対象者を,「Reach to Recoveryのプログラムを新しく自国へ導入してスタートさせ,国内での普及に貢献した人で,なおかつ当人もボランティアであること」としている。
 その授与式は2年に1度,ヨーロッパで開催される「Reach to Recovery International Conference」の会場で行なわれるが,今回はさる5月13日,イタリアのグラドで開かれた「第11回同Conference」の会場で執り行なわれた。
 ちなみに,「Reach to Recovery」とは,乳がんの手術体験者が入院中の乳がん患者を訪問して,退院後の社会復帰への不安や疑問に関してアドバイスをするもの。個人的訪問ではなく,病院の協力を得た上での正式訪問である点が特徴で,ボランティアになるためには,所定の研修会に参加してトレーニングを受けることが義務づけられている。

例年にも増して多彩な企画が

 大会の午前の部は,ワット氏の進行のもとに進められ,まずここ数年,恒例になっている同会の名誉会員である永 六輔氏(放送作家・タレント)による講演「患者さんへの応援歌」で開幕。そして,岸弘子氏(あけぼの会ヤング代表)の「若い乳がん患者の悩み」に続いて,米沢富美子氏(慶大教授・理工学部)による講演「2人でつむいだ物語」が行なわれた。
 また,午後の部では飯野佑一氏(群馬大教授・救急医学/第9会日本乳癌学会総会会長)によるオープニングスピーチ「日本の乳がん治療・現状と展望」に続いて,パネルディスカッション「患者は治してほしいのです-再発予防と再発治療に効く抗がん剤の効力とその限界」(パネリスト=癌研究会研究所乳腺病理部部長・坂元吾偉氏,国立がんセンター東病院化学療法科医長・佐々木康綱氏,川崎医大内分泌外科教授・園尾博司氏,他患者代表,患者の夫)が企画され,患者さんを交えて熱心な討論が展開された。さらに,閉会r後には「東京タワー・ライトアップパーティ」が行なわれ,一部マスコミにも報道された。

「2人でつむいだ物語」

 「2人でつむいだ物語」と題して講演した米沢氏は,日本物理学会会長(1996年)を務めた物理学者で,1984年には女性科学者に授与される猿渡賞を受賞したアモルファス(非結晶物質)研究の第一人者。先ごろ出版されて高い世評を得た半自叙伝『二人で紡いだ物語』(出窓社刊)を紹介しながら,30代に訪れた筋腫による子宮摘出,40代に遭遇した乳がんによるハルステッド法手術など,“壮絶"とも言える自らの闘病体験を静かに語った。また,書名にある「二人(夫妻)」が,お互いに励まし合い,刺激し合いながら過ごした半生を,抑制の効いた語り口で語る氏の述懐に,会場内は共感の潮となった。

 なお,同会では「普通会員」および「賛助会員」を募集している。詳細は下記まで。
・連絡先:〒153-0043 東京都目黒区東山2-14-13 あけぼの会事務局
 TEL(03)3792-1204/FAX(03)3792-1533