医学界新聞

 

糖尿病合併症ゼロをめざして

第5回日本糖尿病教育・看護学会開催


 さる9月23-24日の両日,第5回日本糖尿病教育・看護学会が,百田初栄会長(朝日生命糖尿病研究所)のもと,横浜市のパシフィコ横浜で開催された。
 発会以来,確実に会員数を増やしている同学会の現会員数は949名(9月22日現在)。糖尿病看護の周辺では,本年10月から日本糖尿病療養指導士(本紙2404号,特別編集参照)育成のための講習が開始され,明年3月には初の日本糖尿病療養指導士が誕生する予定。さらに,明年4月には日本看護協会看護研修学校に糖尿病看護学科が開設され,糖尿病看護分野の認定看護師教育も始まり,2002年には「糖尿病看護認定看護師」が誕生予定など,にわかに事態が動きつつある。また同学会では,ホームページの開設を急ぐなど,社会ニーズに呼応した組織へと着実な歩みを進めている。


 今学会では,「21世紀に向けて 患者とともにめざす合併症のない生活」をメインテーマに,会長講演「糖尿病に果たす看護婦の重要な役割-5000人の患者さんとともに歩んだ14年の歳月から」をはじめ,基調講演「摂食障害をともなった糖尿病患者さんへの対応-症例を中心に」(九大・心療内科 瀧井正人氏)や特別講演,教育講演の他,シンポジウム「糖尿病合併症ゼロをめざして,今教育チームは何ができるか」(座長=岡山大 安酸史子氏,亀田総合病院 川上知恵子氏)がプログラムされた。また,イブニングセミナーとして,日本でも糖尿病療養指導士の育成がはじまるが,その参考となるべく「糖尿病スペシャリスト育成の現状と方法」(米・Joslin Diabetes Center エリザベス・ブレアー氏)など2題,およびランチョンセミナー「実践フットケア」(北里大 金森晃氏)も企画され,多くの参加者を集めた。

理想論ではない合併症予防の論議

 シンポジウムは,「糖尿病の患者教育に携わる者の共通の願いは,糖尿病を持つ人々ができるだけ合併症を出さずに,健康で生き生きとした生活を送ってほしいということにある。しかし,重症合併症は患者数の増加,高齢化に比例し増加の一途をたどっている。教育チームには,糖尿病合併症ゼロをめざし,同時に患者のQOLを高めるアプローチが求められている。今シンポジウムでは,理想ではなく現実に教育チームは何ができるかを討議したい」(座長)との趣旨により行なわれた。
 登壇したのは西澤由美子氏(朝日生命糖尿病研究所),谷川和代氏(済生会熊本病院),鎌田惠子氏(萬田記念病院),田中美紗子氏(松江赤十字病院栄養課)の4氏。
 特に,西澤氏は「足外来」の10余年の歩みを紹介。朝日生命糖尿病研究所が1989年から始めている看護婦による「足外来」には,これまでに1000名を超える受診例がある。氏は,糖尿病の重症合併症の1つである下肢切断に関し,「正しい知識と細心の注意を払うことで,壊疽や下肢切断は未然に防ぐことができる。日頃の足の手入れは重要な患者教育の1つであり,自己管理できるよう患者や家族に指導するのが看護婦の役目」と述べ,同研究所外来受診患者約7500名のうち,下肢切断は足趾のみの4例に過ぎなかったことを報告した。
 なお,次回は明年9月15-16日の両日,川田智恵子会長(岡山大)のもと,岡山市の「シンフォニーホール」および「ままかりフォーラム」を会場に開催される。